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フィリピン現代史『エドサ政変』の野次馬 - フィリピンニュース, 現地生活 最新情報発信
   
  フィリピン現代史『エドサ政変』の野次馬
 

 フィリピン現代史に特筆される『エドサ政変』は1986年2月にあり、この政変は『エドサ革命』と称する向きもあるが、革命とは体制が引っくり返ることを言い、旧体制は温存された結果、最近ではあまり革命という言葉は使わず、『政変』と捉えた方が正確になる。

 このエドサという言葉の由来は、スペイン語の『Epifanio de los Santos Avenue』のそれぞれの単語の頭を取って通称『EDOA通り』と呼ばれるもので、19世紀から20世紀にかけて活躍した政治家の名前が付けられている。

 フィリピンはアメリカの真似をしてあらゆる道路に物故した政治家や偉人の名前を付け、ほとんどは名前を誇示したい政治家の名前が付けられるが、物故する政治家は次々生じても道路自体は増えないから今までの道路名を無理に変えることを平気でやっている。

 セブの例を見るとかつてのセブのアップ・タウンの繁華街『マンゴー通り』が、今は『General  Maxilom  Avenue』となっていて、ゼネラルとあるようにこの人物は軍人だが、セブの人間はこんな長ったらしい名前など使わず、昔通りのマンゴーと呼んでいるし、それの方が分かり易い。

 マンゴー通りの由来はそのものずばりで、戦前にはマンゴーの並木道があってその当時の残された写真を見ると、こんもり繁ったマンゴーの樹が連なっていて隔世の感がある。

 また、このマンゴー通りは州庁舎から海側のダウン・タウンに伸びる大通りに交差するが、この大通りを今は『オスメニャ大通り』と命名されているが、その前は『ジョーンズ』となっていて、オスメニャはセブを牛耳る政治一族で、この一族を嫌ってか今もジョーンズと言った方が分かり易いし、ジプニーなどの表示もジョーンズとなっている。

 タクシーに乗って行き先を告げる時に、旧名で言うとセブを知っている人物として遠回りするような扱いはないし、特に外国人には覚えて良い旧名である。

 この通りなど公共財産に政治家などの名前を付ける慣習だが、道は増えないので通りによっては交差点から違う人物の名前が付けられているのがあり、いい加減に政治屋の売名のための馬鹿は止めろと言いたいが、どこの国でも自分の名前を誇示したいのは共通している。

 そういえばセブ島とマクタン島を2本の橋が繋いでいるが、旧橋は単に『オールド・マクタン・ブリッジ』と呼ばれ、新橋の方は元最高裁長官で政治家であった人物の名前が付けられている。

 もっとも、そんな名前など芸能人以下の知名度だからほとんどは『ニュー・ブリッジ』と呼んでいて、それの方が単純明快で分かり易いし、わざわざ死んだ人間の名前など呼んで宣伝することもない。

 エドサに戻るが、この通りは首都圏の大動脈で、道路の中央には軽量鉄道が走り、道路自体は片側6車線もあるが、慢性的渋滞道路として悪名高い。

 片側6車線もあってどうして渋滞になるかの理由だが、渋滞時の車の走り方を見ると、割り込み、無理な車線変更が当たり前で、それがかなり車の流れを悪くしているのが分かり、フィリピン人の運転の汚さが渋滞を呼んでいることは確かである。

 1986年2月の『エドサ政変』時に、小生はマニラで仕事をしていて、政変の様子をつぶさに体験したのは都度書いているが、2月22日の『立て籠もり事件』から政変が一気に始まった。

 当時はマルコス独裁が続いているものの、1983年8月21日にマニラ国際空港で起きた『ベニグド・アキノ元上院議員』暗殺を契機にマルコス批判が高まり、同時に地方ではイスラム系武闘組織と共産党系軍事組織の軍事活動も活発で、見方によっては『革命前夜』状態になっていた。

 その中で、マルコスは繰り上げ大統領選を1986年2月に行うが、分裂していた反マルコス側もアキノ未亡人の『コラソン・アキノ』を野党統一候補として擁立し、選挙戦に入った。

 小生のマニラでの仕事はフィリピン政府関係であったので、役人連中は選挙はやはりマルコス側が有利と見ていたが、投票日前後は休日になり、小生はこれ幸いと山の避暑地と知られるバギオへ遊びに行った。

 今でも良く記憶しているが、バギオの公園の中に大統領選の開票を伝える場があり、大きな看板に開票の様子が次々と記されたが、ここで面白かったのは中央選管発表と、民間の選挙監視団体発表が別々に発表されていた。

 しかも選管と民間の開票状況は全く逆で、選管はマルコスのリード、民間はアキノのリードとなっていてそれを見守る市民も『こんなものだな』と平然と見ていて、その様子がまた不思議な感じを受けた。

 その後、マニラに戻るが、開票に不正があったと一気に反マルコス側が勢い付き、あれよあれという間に2月25日、マルコス一族と取り巻き連中がアメリカ軍の支援でハワイへ逃げる事態になる。

 この時の大統領選は公式の記録ではマルコスが1080万票余(得票率53.62%)、一方アキノは929万票余(得票率46.10%)と、約151万票の差を付けての勝利となっているが、訂正される様子はない。

 この票差と不正開票がどう繋がるのか分からないが、アキノ側は80万票差で勝利していると発表しているが、この辺りはどちらも深く考えずに票の再点検などしないからフィリピン流といって良い。

 その選挙、投票、開票段階で公的機関と地方政治家を押さえているマルコス側が不正な投票と開票はお手の物であったが、中央でコンピュータ集計をしていた職員から不正が暴露されたのがエドサ政変の始まりとされている。

 この反マルコス運動が盛り上がり契機となり、エドサに人々が溢れるようになったのは、2月22日にマルコスが頼みとする軍部から離反が出たためで、この離反者は国防長官のエンリレと軍参謀次長のラモスで、2人は国防省のあった『キャンプ・アギナルド』に少数の賛同者を従えて立て籠もる。

 マルコスべったりのエンリレが裏切った理由はいまだ明らかにされていないが、恐らく風見鶏であったようで、アキノ大統領誕生後は国防長官、やがて上院議員となり、上院の妖怪とまで言われる存在になる。

 このエンリレ、もう90歳を超えて一度は引退したのに今年5月の上院選に立候補していて、仮に当選しても任期年の間になくなる可能性が高いが、要するに権力欲が強いだけの人物で、今のところ当選する見込みは薄いとされる。

 一方、ラモスだが、アキノの覚えめでたくアキノの後継者となって次の1992年大統領選に立候補し当選し、この時の選挙も不正があったと次点の名物議員であったサンチャゴが騒いだが、フィリピンで落選した側が騒ぐのはいつもの例で珍しくない。

 ただし、この時の大統領選は有力候補に票が割れてラモスは得票率23.58%しか取れず、これは歴代大統領選勝利者で最低得票率で、4人に1人も支持されず半数を得なければ再選挙というルールがあっても良いが、フィリピンは30%台で当選というのも多く、今のドゥテルテも39.01%で当選している。

 エンリレ、ラモスの立て籠もり時に一緒であったホナサンという中佐が、後にこのことを売り物にして上院議員になっているから、憂国の士として蜂起したというより売名の方が強いのではと思わせ、またフィリピン人はこういうドラマ性のある人物が好きである。

 これも前に書いているが、当時その近くに住んでいた小生は早朝にその基地前の道路を走っていて、門の内側が何か慌ただしい感じを受けたが、それが籠城の始まりで世紀の事件に繋がるとは全く思わなかった。

 エドサに人が溢れ出し、夜になってエドサ通りに見物に行くと人々が手を繋いで道路を埋め尽くし、まるでお祭り騒ぎでこれはさしものマルコスも危ないのではと思った。

 住んでいたのが基地の裏なので、様子を見に行くとタイヤがあちらこちらで燃やされ黒煙が上がり、正体不明のジェット機が基地上空を旋回するなどこれは容易でなく、軍と市民の間で市街戦に発展するかとも思ったがそこまでにはならなかった。

 そんな騒擾状態の中、仕事に行くと役人連中は浮足立っていて、今までマルコス一辺倒であった連中が、アキノのシンボル・カラーの黄色にちなんで『下着の色は実は黄色いのだ』などと言い出し、住宅街を通るとそれまでマルコス派の色であった青の旗が飾られていたのが、一気に黄色の旗に変わっていてフィリピン人の変わり身の早さに驚かされた。



【写真中央は大統領就任宣誓をするコラソン・アキノ。この時マルコスも大統領就任を宣言していたが、26日にハワイへ逃亡】

 


  Homepage: http://cebushima-blg.jugem.jp/
Updated: 2019/02/24 (日)

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