フィリピン最大のファストフード企業は『ジョリビー』で、元々は1970年代にマニラ首都圏ケソン市内にあるクバオでアイスクリームの屋台を出していたのが、今やフィリピンを代表する企業となっている。

【写真-1 いくら物価の安いフィリピンでも出店はかなりの負担】
フィリピン国内店舗数は2000店を超し、海外にも店舗を展開し、20年以上前にヴェトナム・ホー・チ・ミンへ行った時にジョリビーの店が目に入り中には入らなかったが、店の外の写真を撮った記憶がある。
海外での店舗展開で特徴的なのはアメリカ、香港、そして中東、ヨーロッパだとイタリア、イギリスと、フィリピン人が多く移民、或いは労働者として滞在している国に偏り、それらを対象としているのが分かる。
その意味では日本もフィリピン人は多く、進出する話は昔からあったが、フィリピンの味を日本に持って来ても、業界内で勝負にならないと分かっているのか、噂だけに留まり実現化していない。
写真-1はセブ島に或る町のジョリビーの店で、セブ島内にいくつ店があるのか数えたくもなく知りたくもないが町の中心地に新しく開店した。
ここは町といっても人口は7万人を超えるから、日本ならチョッとした市並みだが、フィリピンの場合はこれだけ人口を抱えても市街地と呼べるのは端から端まで歩いて10分もすれば途切れてしまう。
この手のファストフード店は全くなく、いよいよこの町にも出来たのかと中に入るが、中に入れば店の外観もそうだがどこの店に入ってもインテリアも同じ、当然メニューも同じでそれがフランチャイズ店の特色といえばそれまでだが。
ただし、売り物にしているハンバーガーを食べる人は少なく、ほとんどが鶏のから揚げにご飯を組み合わせたセットを食べていて、ハンバーガー・チェーン店というのはどうかなという感じもする。
しかし、そこがジョリビーの商売の巧さで、フィリピン人が好むメニューと味付けで業界トップ、世界的企業のマクドナルドなど寄せ付けず、マクドナルドがジョリビーのメニューの真似をするようになっている。

【写真-2 ジョリビーのマスコットで子どもには人気がある】
商売の巧さといえば、ジョリビーは左前になった企業を買収して立て直すのが上手で、ピザ・チェーン、中華チェーン、ケーキ・チェーンなど次々と買収し軌道に乗せているが、不味かった味の方はケーキ・チェーンを除いて買収されて美味くなったということはなく、宣伝の相乗効果で伸ばしたようだ。
そのジョリビーが2020年決算をこの程発表したが、さすがに盤石といわれたこの企業もコロナ禍では業績を一気に落とし、115億ペソ(約240億円)の赤字となり、前年が73億ペソの黒字であったことを考えるとその急減ぶりが目を引く。
やはり防疫下で人の移動が制限されたのが大きく、売り上げは前年の28%弱落ち、1760億ペソ(約3700億円)。それでもコロナ禍の1年でこれだけの売り上げを出しているのはファストフード企業としてはやはり凄い。
話は変わるが、毎年赤字続きで散々であった日本のマクドナルドが、コロナ禍でV字回復したと話題になったが、片や業績を伸ばして黒字、片や業績を落として赤字とその違いは分からないが、日本のマクドナルドはピンチはチャンスに変えたことは確かなようだ。
大赤字を抱えたジョリビーだが、今年2021年は業績が回復すると読んでいて、新規に国内外で450店舗増やすことを発表し、その投資額は2019年の22%増し、総額122億ペソ(約256億円)というから強気といえばかなり強気。
ジョリビーとフィリピン最大の小売りチェーンであり、大型ショッピング・モールを展開するシューマート(SM)は同じ中国系ということからか必ずジョリビー傘下のチェーンをいくつも出店しているが、このSMもコロナ禍では業績を落としている。
SMも2020年度決算を発表したが、それによると総収入は前年の30%減となり、赤字こそならないものの純益は180億ペソ(約380億円)で前年の52.7%減少となった。
その中で、モール運営事業収入は前年より60%近く減少、モールというのはテナントへの賃貸事業、不動産屋と変わらずそちらのテナント収入も55%減少となり、唯一SMの事業で増えたのはコンドミニアムなどの事業だがそれでも伸びたのは6%と低い。
フィリピンを代表する企業がこのような具合だから、他の業種も似たり寄ったりで、2021年のフィリピンのGDP成長率はどの経済機関もマイナス、中には10%近く落ち込むなどと予測するところもあって、ジョリビーのような強気路線が通じるかどうかは未知数。
コロナ禍でデリバリー・サービスが増え、ジョリビー専用のオートバイが走り回るがこれなど前からやっていたことで、コロナ禍で売り上げ増大に寄与はしたであろうが、黒字には力は足りなかったようだ。

【写真-3 この手の方式もアイドリングは長いから環境には良くない】
写真-3はマクドナルドのドライヴ・スルーの様子で過日遠出をした時に利用した。この手のファストフード店に寄るのは淹れたコーヒーがあるからで、ハンバーガーの方はついでに買っているようなところがある。
それでも地方へ行くと、コーヒーを置いていなかったり、あっても朝に淹れて何時間も経ったようなコーヒーしかない時もあって、何だと思うこともしばしだが、この日は昼時であったので、コーヒーはあった。
日本のファストフード店のドライヴ・スルーというのはどのようになっているのか知らないが、フィリピンでは最初に注文を聞くコーナー、次に料金を支払うコーナー、そして写真-3のコーナーで注文品を受け取るが結構手際は良い。
コロナ禍以前から車で遠出をする時は利用していたが、コロナ禍で店内飲食を避けてこうしてドライヴ・スルーを利用する人が多くなったのは確かなようだが、ファストフードは中味よりも包装やカップなどゴミ捨ての時に無駄な物が多いなと感じる時でもある。

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