新型コロナ用ワクチンは従来のワクチン製造法とは違い、遺伝子操作とかつ余りにも早い開発と実施から今一つ信頼性を持てず、今日まで接種を控えていたが2つの理由から接種することにした。

【写真-1 セブのワクチン接種会場】
その1つはワクチン接種をした者としない者に対して区別をすることが世界的な流れとなり、特にワクチン接種をしていると旅行、とりわけ海外旅行においてはかなりの便宜が図られるようになり、流行直前の2020年1月の台湾旅行以降こんなに長く旅行が出来ない状況はさすがに小生も我慢の限界。
もう1つはセブでコロナに感染した日本人がセブの病院で治療に当たって、重症でもないのに治療費を100万円近く請求された話を聞いたからで、日本人患者には治療費をぼったくるフィリピンの病院と知っている小生でも、さすがにこれは捨て金になると思い、ワクチンを接種することに決めた。
ただし、ワクチンを接種したらコロナに感染しないなどの誤った認識は持っていなくて、疫学的に接種した者は重症化を防げるという一点を信じているだけで、要諦はワクチン接種ではなく感染しないことを心がけるに尽きるのだが。
この当たり前の考えはかつてアフリカ生活をしていた時の経験からで、例えばアフリカへ行く前に黄熱病、狂犬病、破傷風のワクチンを接種したが、他に現地で猖獗を極めるマラリアの予防薬なども用意したが、それらの罹患は見知らぬ犬に近づかない、あるいは病気を媒介する蚊に食われないなど日常的な注意で避けられる。
小生なりに証明したのがマラリアで、マラリアの予防薬など長期間服用による薬害を知っているために信用せずに全く飲まず、それでいて3年間の生活でマラリアに罹患しなかった数少ない日本人として帰国したのも、蚊に食われない生活の徹底の賜物であった。
といって過去の経験から今を評価するのも危険であることは分かり、医学的な見地というより先述2つの極めて打算的な判断で新型コロナ・ワクチンを受けることにするが、もう1つこの時期に日本政府が海外に住む邦人に対して接種事業を推進したことも関係がある。
日本政府は海外に住む300万人といわれる邦人に対して、新型コロナ対策は無策、放置状態で、その良い例が国民1人づつに10万円支給する事案で在外邦人は全く無視されこれでは『棄民』ではないかとの指摘があり、小生も本HPで批判をした。

【写真-2 ここは接種後の観察区域で空席が目立つように楽であった】
9月になって在比セブ領事館を通じてメールで『邦人向けワクチン接種』の案内が来て先述2つの理由によって小生も申し込みをしたが、最初の接種はマニラ首都圏で行われ、セブの人間は対象者とはならずやはりなという感じは受けた。
ところが10月に入ってセブで接種が行われる案内がメールで来て、その時期にたまたまメールの開けない場所に居たのでメールを見られず、見た時は申し込み期限は1日遅れていたが、事情を話して接種の申し込みを行えた。
接種指定日は10月9日(土曜日)で、日本のODAで埋め立てた場所で行われ何年振りかで同方面へ出かけたが、工事中の第3セブ-マクタン大橋の様子も分かったし、海際にはいつの間にか巨大なカジノ・リゾート工事が進捗中で、日本の税金で埋め立てた同地にギャンブル場が造られているなど日本国民は知らないであろう。
接種会場は巨大ショッピング・モールの裏手にあり『NOAH』と略称されるセブ市の体育館の様な大きな建物だが、近くには民間の団地もあるが、辺りは雑草の生える一帯で夜間にはどう見ても不安な場所で、高く生い茂る藪の中には死体が転がっていても不思議ではない雰囲気。
日本の外務省の公式統計ではフィリピンの在留邦人数は2020年度で1万6894人で、これは国別では世界で17番目の数となっていて、16番目はインドネシア、18番目はイタリアと続いている。
その内セブの総領事館管轄では約3000人となっているが、これらの数は在留届を出している数であって、三ヶ月以上在留しても出していない人はその倍近くともいわれているし、短期滞在者や旅行者を含めるとその数は何倍にも膨らむ。
最初にマニラ首都圏で行われた邦人向けワクチン接種では500人程が受けこの数字が多いのか少ないのか判断し難いが、かなり込み合ったというので午前中の受け付け時間を遅めにずらす。
会場に行くと車の列が続いていてこれは時間がかかりそうだなと思って係員に聞いてみると、この車列は車に乗ったまま接種する『ドライブ・スルー』のフィリピン人用の列で、邦人向けは建物裏手で受け付けていると分かる。
体育館というより格納庫の様な殺風景な建物内に椅子が並べられ、セブの総領事館館員から用紙を渡されて最初に登録手続きをするが、本人確認の後事前に用意していた書類は役に立たず改めて記入し次のステップへ。
最初は手のひらをかざして体温を計り、いくつかの設問に答えて次に隣に移動して血圧と血中酸素濃度を計り、次にまた質問に答えて次の場所へ移動するが、混むのではないかと思っていたが係員の数の方が多く、数多く並べられた椅子に座っている人も少なかった。
こうしていくつかの場所で設問を受けていよいよ接種するブースへ向かうが、こちらも何ヶ所も設けられていたが人が待っている様子はなく、導かれたブースに座って接種を受けるが、接種担当者がゴム手袋装着に手間がかかっているなというのが印象であった。

【写真-3 接種跡に張られた会場のNOAHシール】
接種するワクチンは『ファイザー』製と改めて告げられ、左肩を出しアルコール消毒をしているなと分かっている内に『パチン』という音がしたと思ったら接種は済んでいて、接種跡にテープが張られ1分ほど押さえていろと告げられ接種は終了。
ニュースなどで接種の様子を観るとかなり深く針を差し込んでいて、これは痛いだろうなと思っていたが痛みは全く感じなく、本当に接種されたのか疑ったくらいで、注射の好きな人はそうはいないと思うが、小生などは健康診断で採血する時などじっとその様子を見てこの人は巧いなと感じる人間だから、意外な接種であった。
接種後にすぐに血圧と、体温を計るが血圧の変化はなく、体温が0.1度上がり、血中酸素が88%とかなり低くなったのが接種直後の反応といえば反応だが、この血中酸素もしばらくして持参した器機で計ってみるといつもの通りの数字に戻っていた。
接種後の経過観察で30分近く椅子に座っていたが、少し喉が渇いて持参の水を飲んだことくらいで大きな変化はなく、接種カードを受け取って出口へ向かうが全部で要した時間は1時間程度で思ったより早かった。
他の邦人もパラパラやって来る感じで列を作るようなことはなく、会場を設営、運営した関係者には感謝を捧げたいが、このパラパラ接種を受けた邦人で気が付いたのは20代から40前後という若い人ばかりで、小生のようなシニアに入る人の姿は見かけなかった。
以前にも書いているがフィリピン政府がワクチン事業を進める以前から中国製ワクチンを密輸して接種する人が多く、小生にも中国人グループから誘いがあったが話には乗らず、その内政府の接種事業が進んで、国籍に関係なく接種出来るようになり、邦人でも心配な層は早々と地元で接種を済ませているのが実情である。
つまり待ちに待った日本政府による接種事業以前に多くのシニアは既に接種を済ませていた訳で、今回の会場に申し込んだのは年齢的に地元で接種が遅くなっている人々、或いはワクチンがファイザーと分かって接種をした者など考えられ、小生のような層が今頃ワクチンなど接種するなど不思議と思われたのではないか。
3週間後に2回目のワクチン接種を行うが、これは後で知ったことだが日本の大使も会場に来て視察し、今回セブで受けた人は100人らしく、セブに3000人以上は居る邦人数から見ると少ない気もするが、ほとんどの邦人は既に地元で接種済みであった証明のような気もする。
接種後の経過だが、当日は何となく怠く横になると眠ってしまい副反応は明らかだが発熱などはなく、血中酸素も正常ながら接種した場所の痛みは強く左腕側を下に横になることが出来ず、これは3日目の今日になって消えるまで痛みは続いた。
今まで打ったワクチンで一番痛かったのは狂犬病ワクチンで、これは打った場所の痛みはあったが今回のコロナ・ワクチンの様な横になれない程ではなく、コロナ・ワクチンが従来のワクチンとはいかに性質が違うと感じた。

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