フィリピン政府は現在発出している『非常事態宣言』を来年9月12日まで1年間の延長を決めたが、日本のように2週間から1ヶ月という細切れで恐る恐る漫然と延長を重ねているよりは方針が座っている感じはする。

【写真はセブ地区で打たれているモデルナ製ワクチン】
ただし、これはフィリピン政府としての在り方で、実際は各地方自治体が状況に応じてコロナ対策規制を緩めたり強めたりする権限が付与されていて、辛辣にいえば中央政府はもうお手上げで対策を地方に丸投げした感は強い。
9月1日にフィリピンのコロナ累計感染者数は200万人の大台を超え、1日当たり2万人を超える日が続き、2週間経った9月13日現在の感染者数は222万人を超え、一向に収まる気配はない。
そういった中、世界中で進められているワクチン接種が効果を発揮し、国によっては劇的な数字を見せているが、その多くは金に飽かせてワクチンを買い漁った日本を含めた富裕国で、いわゆる途上国や最貧国はワクチン接種の機会は少なく無辜の民の命は次々と失われている。
最近、アセアン加盟国の100人当たりのワクチン接種回数という統計が出て、それを見るとアセアン加盟国10ヶ国中、フィリピンは100人当たり33.97人で下から数えた方が早い7番目という結果になった。
新型コロナ・ワクチンは1回と2回接種のタイプがあり、この統計資料はタイプの区別はされていないが、100人当たり200人という数字になればその国のワクチン接種は完了となる。
アセアン加盟国で1位はシンガポールの152.23人で一時は深刻な事態であったが、さすがに中国の系譜を引く強権国家のため接種はかなり進み、同じく中国の衛星国といわれるカンボジアが121.29人で2位に入っていて、この好成績は全面的に中国製ワクチンに頼っているためであろう。
3位に人口当たりでは最悪の感染者発生といわれたマレイシアが115.94人で、ようやく半分の接種が済んだ計算になり、4位にブルネイが82.71人、ラオスが59.66人5位に入るが、ブルネイ、ラオス両国は人口は少なく感染者数も少ないため感染予防という面が強い。
タイが55.57人で6位、東南アジアで最大の感染者数を出し一時はどうなるのかと心配したインドネシアが40.54人、7位で続き、8位に33.97人のフィリピンとなりフィリピンで1回以上接種した人は人口の3分の1に達したと政府は発表している。
9位には一時は感染者が少なく優良国とされたヴェトナムが24.02人で、この数字が物語るように今では感染が爆発し主要都市ではロック・ダウンの措置が取られ、新型コロナは油断するとこうなるという見本のようになっている。
最下位は11.41人と国の勢いは同レベルと見て良いカンボジアの10分の1以下となっているミャンマーで、今年2月の軍事クーデターによる軍の支配によって二重にも三重にもパンチを受けていて、アセアン加盟国では最も悲惨な国に陥っている。
他国に比べて遅れていると指摘されるフィリピンでの1日当たりの接種回数は50万人を超えていて、この数字はまだ伸びて行くが、接種が進む中、フィリピンに住む外国人に対してはどのような具合、扱いになっているのか記したい。
以前にも書いているが流行初期に中国がワクチン開発に成功し、自国内は勿論他の国にワクチンを提供する『ワクチン外交』を展開したが、それは表向きで世界中に4000万人から7000万人が住む華人と華僑は自らのネットワークで自前調達し、さっさと中国製ワクチンを接種していた。
フィリピンでもワクチン接種など公的には認可もされていない段階で、中国から密輸されたワクチンが出回り、その流れで小生の知り合いである中国系から、接種グループを作る必要があって接種をしないかと誘われたことがあった。
中国製ワクチンという理由ではなく、新型コロナ・ワクチンその物を疑問に思っている小生としては丁重に断ったが、その内、国内でワクチン接種は始まるものの、まだ、政府が調達するというより他の国からの寄贈ワクチンで凌いでいる感じが強かった。
その内、バランガイという地域の最少行政組織の人間がワクチン希望者を調べるために一軒一軒回り出し、聞いてみると外国人でも接種希望は出来るというが、上述のようにワクチン接種はしたくない派であまり関心は持たなかった。
ワクチンに関してはアフリカ生活で黄熱病、狂犬病、破傷風など最小限必要な物は過去に接種しているが、こういったワクチンは接種しておけば感染しないタイプと感染すると症状が和らぐタイプに分かれるが、今進められているコロナ・ワクチンは後者のタイプで接種しても感染はする。
そのため、2回接種しても変異を続けるコロナに対しては効果が薄くなるという研究も出て3回目接種などという議論や実際に接種をしている国も出ているが、病気の要諦は罹らないことであり、感染しないように注意していれば罹らないという当たり前のことで防げる。
9月4日(土曜日)になって、在セブ日本国総領事館から『フィリピン在住の日本人を対象とした新型コロナ・ワクチン接種のご案内』というメールが送られ来たが、この手のメールは在留届を出して日本の公館からの各種お知らせをメールを受け取ることを承知すると適宜送られて来る。
新型コロナに関しての情報はかなり頻繁に送られて来るが、どれも政府や自治体が発表している内容を伝えるだけでこれといって目新しいものはなく、詳しくは政府、自治体情報を参照してくれというだけで、英語の得意でない人はお手上げだろうと思い、どうせなら英訳したものを載せたらどうかと思うが、そこまでのサービス精神は外交官にはなくてない物ねだりか。
さて、9月4日のメールはいよいよ日本政府も棄民状態の在外邦人に対して本気に取り組むのかと思って読むと、マニラの日本人団体が主体でフィリピン政府の協力を得て接種を行い、9月6日(月曜日)午後2時にその申し込みフォームが発表されるとなっている。
9月6日になってそのフォームを見ると、メールや年齢、パスポート番号、居住地などチェックする項目があり、それを送信すれば申し込みは完了するという形になっていて、小生もそのフォームに記入し送信してみた。
ワクチンに対してはまだ懐疑的な小生だが、セブ在住の日本人がコロナに感染して治療、回復、退院するまでに病院に100万円近く支払ったという話を聞くに及び、元々外人には高い料金を取るフィリピンの病院と知っていながら、これでは地獄の沙汰も金次第となり無駄金と思いワクチンを打った方が良いと宗旨を変えた。
その申し込んだ結果だが、9月10日(金曜日)になって『第一バッチ、接種日・接種会場の決定』というメールが在セブ日本国総領事館から送られて来た。
それには条件に適合した申込者に別途案内を送り、(1)日時:2021年9月18日(土)午前10時~午後1時(2)会場:アヤラ・モール・マニラベイ 5階の映画館エリア(3)ワクチン銘柄:ファイザー(Pfizer)と記されていた。
マニラ首都圏に住む邦人のみ対象ということは明らかで、セブを始めとした他の地域の邦人に対しては何も書かれていなくて、フィリピン政府側と今回条件が合致しない人に対して調整中と思わせぶりな文言はあるが、言質を取られるのを避けているのか見通しについては全く触れていない。
まあ、関係者はそれなりに一所懸命なのだろうが、人を食った内容からこんなものだろうなというのが率直な感想で、問い合わせメールも記載されているが問い合わせる気にもならず、こういう曖昧なものに頼ろうとした自分にも恥じ、やはり地元で行っているワクチン接種に申し込んで受けた方が正解かなと思っている。
それにしても在外邦人への幻となった『10万円給付』といい、今回のワクチン接種の取り組みといい、現在300万人近くは居ると見られている在外邦人への日本政府の扱い、対応は酷く明治時代同様の『棄民』と変わらないといって憚らない。

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