【承前】 外壁や看板に大きな被害を受けた近くのショッピングモールは、自家発電と貯水装置を備えているためにスーパーやテナント、数年前に同モール内に開業した日系ホテルも営業を続けているが、その横の通りを歩いてみると電柱が何本も倒壊、折れていた。

【写真-1 右に伸びる道はショッピングモール横の道で、それと交わる渋滞で知られる道路角にあったバイク・タクシー用の小屋掛けは完全に吹き飛び、周りの昔から建つ平屋の屋根も多くは飛ばされている】
その-2でセブ島内の電気の復旧状況を書いたが、1月5日に電気配電会社が新たに復旧状況を発表し、それによるとメトロ・セブ地区は41%、南部地区は24%となり、対する北部地区は99%となっている。
これで分るように今回の台風『オデット』はセブ市以南の地域に甚大な被害をもたらしていることが分かり、2011年の台風『ヨランダ』がセブ市以北の地域が集中して大被害を受けたのとは今回は対象的で、元々セブ島南部地域は過去において台風の被害を受けることは少なく、それが防災意識の点で油断、脆弱性があったのかも知れない。
被災直後は電気関係は全く駄目で、勿論テレビやインターネットなど情報が全く入らず被害状況がどうなっているのかヤキモキしたが、車のラジオが使えると思って付けてみると、AMラジオは入らずFMラジオは聞こえて来るが意味のない音楽を流すばかりで、それでもマクタン-セブ国際空港が閉鎖されているだけは分かった。
被災すると他の情報を得ることが一番大切とよく言われることだが、情報を発信するメディアも未曽有の被災で取材どころではないことが切羽詰まったアナウンサーから伝わり、以前日本から持って来たソニーのカセットが電池を入れれば使え、AMとFMも入るのを思い出したが肝心の単一の電池がない。
小生は1991年からセブに住んでいて、2013年11月の100年に一度といわれた超大型台風『ヨランダ』も拙宅は直接影響を受けなかったが、今回の『オデット』は初めてフィリピンで直接被災経験をする台風となった。
1990年11月に台風25号『RUPING(ルピン)』が今回の『オデット』と同じ針路でセブ島中部を横断し死者800人、セブ州は40人、内セブ市は28人で小生はセブに来る前年で当時被災した在留邦人から被害状況を聞いたが、水が止まったのは住んだ場所にもよるが2日だけというから、今回のような長期間断水というのは異常だが、当時の邦人数は400人くらいであった。
その中でも記憶に残るのはセブ島とマクタン島を繋ぐ唯一の橋に台風で流された貨物船が橋に激突してしばらく通行が出来ず、この船は日本の船会社がチャーターしていて後に下りた保険金をセブ州に寄付して、その寄付金でセブで初めての陸橋が造られ、今もその陸橋上を走る時はこの話を思い出す。

【写真-2 ショッピングモール横の道路で目に入ったのが散乱する残骸と倒れている電柱で、それも何本も倒れていてこれを見てセブの中心部の電柱はかなりやられたと思った】
1991年11月には台風25号『URING(ウリン)』がセブ島を含むヴィサヤ諸島を襲い、この時はこの台風を経験しても通常の台風通過と大して気にもせず、実際セブは通常通りに動いていたが隣のレイテ島で大被害が出た。
この時の死者は5000人から8000人という数字が出ていて、最も被害が出たのはセブから高速船が繋ぎ、戦時中には日本軍が上陸した西岸にあるオルモック市で、ここでは市内を流れる川が鉄砲水に襲われ数千人が流され、今もって死者数がはっきりしないのはこのためであった。
この台風被害を受けた後にレイテ島のタクロバン方面へ行く機会を得たが、被災状況を土地の人に聞いてみると、鉄砲水はオルモック港にある2階の屋根を越えて来たといい、鉄砲水災害の恐ろしさを知るが、この鉄砲水の原因は山の樹の切り過ぎといわれた。
『ウリン』の時はセブは被害を受けなかったと書いたが、今も記憶にあるのは、オルモックの水害によってセブでは魚が売れなくなったという話で、そういえば台風後はしばらくは魚を食べなかったなと思い出した。

【写真-3 写真-2と同じ通りでコンクリートの電柱が途中から折れていて人はその下を掻い潜って通っている。右側にある白い塀は柱があって施工もしっかりしていて倒壊しなかったが、近くでは風に煽られた塀の下敷きになって何人も亡くなっている】
それ以降も台風は年中行事のようにフィリピンを襲い、1995年10月、台風20号『ROSING(ロシン)』で死者900人以上、2000年代に入って2011年12月の台風21号『SENDONG(センドン)』は台風はほとんど来ないというミンダナオ島を襲い、死者1300人近くを生じる。
翌2012年11月、前年の台風センドンと同じ様な針路の台風24号『PABLO』がミンダナオ島を横断し死者1900人以上、通常と違う針路を取る台風が頻発し、地球温暖化による台風の発生場所と針路の影響が指摘された。
そうして2013年11月、史上最大級の台風被害を生じた台風30号『YOLANDA(ヨランダ)』がセブ島北部とレイテ島、サマール島を襲い死者6300人以上を生じ、この時のセブ市街地はほとんど影響はなくチョッと強い雨と風という感じで、一晩明けて大被害を生じているなど分からなかった。
この時はセブ島北部の町で炊き出し支援を2回に分けてしたが、都会と違ってまだ井戸を使う生活が残っていて水に関しては不便を感じず、この点今回の被災で分かったが都会はインフラが充実しているのと裏腹に一旦事あれば脆弱ということであった。 【続く】

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