フィリピン政府側と反政府武装組織モロ・イスラム民族解放戦線(MILF)はミンダナオ島における長年の紛争に終止符を打つために和平交渉を進めているが、この動きに水を差す爆弾事件がミンダナオ島各地で起こり、政府側は原因、背景の究明と共に警戒を強めている。
ミンダナオ島南部では小さな爆弾事件は毎日のようにあるが、7月26日、ミンダナオ島北部の最大都市で治安の良いとされる繁華街で爆発があり、死者8人、重軽傷者46人を出した。
また、8月5日、マギンダナオ州でも爆発事件が発生、死者8人、重軽傷者30人以上の惨禍となった。
捜査によると両地区での爆発物の種類は違い、カガヤン・デ・オロ市が迫撃砲弾、コタバト市が化学薬品とガソリンを使用していて別々の犯行と見られるが、犯行の動機、容疑者の特定には至っていない。
事件発生を受けてアキノ大統領は『政治的背景がある』と指摘し、この8月9日に終わるイスラム教徒の行事『ラマダン明け=断食月明け』に照準を合わせたグループの犯行と匂わせている。
一方、カガヤン・デ・オロ市の場合は、市から立ち退きを求められている露店商関係の者による犯行の見方もあり、また、コタバト市の場合でも市の要職に就いている関係者を狙った怨恨による犯行との見方も出ている。
これに対して軍はテロ組織に指定されているジェマ・イスラミア(JI)が関与していると見ていて情報は錯そうしている。
また、MILFが進める和平交渉に不満を持つ、MILFのかつての母体、モロ民族解放戦線(MNLF)も和平が進むと存在意識が薄れると、現状では武闘闘争に踏み切ると警告を発している。
この他にNILFの路線に飽き足らない分派組織イスラム自由戦士(BIFF)がJI、イスラム系組織アブサヤフなどと連携して、事件を起こしているとの情報もあり、不満分子が新たな武闘組織を作っていく負の連鎖は断ち切れる様子がない。
この他に共産党系の軍事組織、新人民軍(NPA)もミンダナオ島では活動が活発で、国軍に対して武力攻撃をかけていて、和平交渉が進んでいるとはいうものの同島の治安状況は依然回復されていない。
|