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フィリピンでは上下院議員に対して、任期中の毎年、上院議員(任期6年)には2億ペソ(約4億6千万円)、下院議員(任期3年)には7千万ペソ(約1億6千1百万円)の『優先開発補助金=PDAF』という名称の金が支給される。
これは各議員の自由裁量で使える金で、選出区の地域振興、民生事業に本来使われるものだが、議員の地盤を強化するための使い勝手自由の利権に化けて、汚職の温床と従来から指摘されていた。
このほど会計検査院(Commission on Audit=COA)がアロヨ政権下の2007年~2009年分のPDAF支出を監査したところ、3年間の本来の予算額は798億ペソに対して総支給額は1160億ペソの異常な超過となり、多くは議員の懐を肥やしただけではないかと指摘を受けている。
また、その使い方だが、1160億ペソの内、COAが支出の経路をたどり監査ができたのはわずか3分の1強の410億ペソのみで、巨額な金がどのように使われたのか解明できなかった。
監査のできた410億ペソについても、内61億ペソ強が、活動内容に問題のある82団体(NGOなど)の772事業に、上院議員12人、下院議員180人のPDAFが使われたことが判明。
このトンネル団体を通じた詐欺ともいえる手口は①議員自身が団体運営に関与。②複数の団体の代表に同一人物が就任。③入札などの公平な手続きを経ず議員の息のかかった業者を選定。④支出に対して文書を残さず決定。⑤団体の法律で定められた公的な登録がなく、所在地が不明。⑥本来の目的を逸脱した資金の流用。などが挙げられている。
そういった杜撰さから、支出の清算手続きも4分の1に当たる15億3千万ペソが未清算状態で、清算された分からもでっち上げと見られる領収書が多数見つかった。
また、議員によって支給額が違っていることも判明し、ミンダナオ島コンポステラバレー州選出下院議員は15倍にも当たる32億9千万ペソを支給、こういう異常な金額がなぜ支給され、どのように使われたかは未解明状態。
こういった過剰に支給を受けた下院議員はアロヨの息子を始め、19下院議員に上り、上院議員もアロヨ側に立った者には数億ペソを超える過剰な支給を受けている。
一方、アロヨに敵対していた議員に対しては現大統領のアキノを始め数100万ペソ程度と、アロヨ政権がPDAFを利用して議員の取り込み、懐柔、制裁を行っていたことが判明。
こういったPDAFのNGOへの支出については、先に架空のNGO団体を作り100億ペソのPDAFを騙し取り、前上院議長を始めとする上下院議員に裏金が還流する疑惑事件が発生し、主犯とみられる人物2人に対して逮捕状を発行、所有不動産、資産の凍結がなされるなど事件解明が進み、関係議員に対する逮捕状執行も間近いのではと見られている。
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