フィリピンの上院、下院議員に支給される『優先開発補助金=PDAT』を巡って、司法当局の捜査、解明が進捗し、有罪の場合最高で終身刑に科せられる『略奪罪』が適用される見込みとなった。
この事件は架空の民間団体(NGO)をでっち上げた実業家(既に逃亡し指名手配中)と上院、下院議員が10年間に渡ってPDATから100億ペソ(約230億円)を騙し取っていた事件を発端としたもので、会計検査院の調べでも2007年~2010年のアロヨ政権後期で82団体、少なくても61億ペソ以上の不適切な支出が裏付けられている。
また関わった議員は前上院議長を始めに上院議員12人、下院議員180人と全国会議員の半数以上となった。
このPDATは毎年上院議員に2億ペソ、下院議員が7000万ペソに割り当てられ、選挙区の民生、インフラ整備を名目に支出されるが、実態は議員の選挙運動資金同然で、しかも裏金になって還流する『黒い金』と存在し、従来から廃止は不適切と指摘されていた。
しかしながらアキノ大統領は『制度自体は悪くない』と、今回の犯罪行為が明るみになってもPDAT制度を改める様子はない(ちなみにアキノ大統領は上院議員時代にPDATを受け取らなかった数少ない議員の一人だった)。
このPDATは、制度を通じて時の政権が議員を取り込む武器とし、また選挙資金への流用を行っているためで、前アロヨ政権では上限が規定されているにも関わらず、2007年~2010年の3年間で本来総額798億ペソのはずが、50%近い水増しの1160億ペソも支出されていたことが予算を管理する予算管理庁より明らかにされた。
こういった行為がまかり通るのも政官がグルになって行ってきたことで、相変わらずフィリピンの公金に対する汚い姿勢は上から下まで変わらないことが暴露された。
今回、汚職罪や横領罪より重い罪状の略奪罪で立件する方針は、流用額が5000万ペソを超える悪質な議員が複数あり、アキノ政権が掲げる『汚職撲滅』のスローガンがどこまで本気かどうか占う試金石にもなる。
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