今年の5月に3年ごとの上下院議員、地方自治体首長、自治体議員の選挙が行われたフィリピンで、バランガイ選挙が行われる。
バランガイとはフィリピンの地方行政組織の中で一番下に位置され、このバランガイが集まった自治体が町、市となり、例えばセブ市は現在人口90万人超に対してバランガイは80ある。
このバランガイ組織は自身の権力を拡大するためにマルコス元大統領が、従来あった『バリオ』という自治組織を改編、編み出したもので、1991年には法律で成文化された。
現在、フィリピン全土には2012年9月現在で41995か所ある。
この最少行政組織の長は『バランガイ・キャプテン=議長』と呼ばれ、その下に評議員があり住民の選挙によって選出される。
今回のバランガイ選挙の投開票日は10月28日(月)になるが、その候補者受付が10月11日から始まった。
最少行政組織とはいえ、住民数万人を数えるバランガイもあり、バランガイ・キャプテンの意向によって首長や自治体議員の当落に大きな影響を与え、また住民に最も身近な選挙になるためかなり加熱する。
今回のバランガイ選挙絡みの事件では、分かっているだけでも7件発生しており、銃撃などでバランガイ・キャプテンが3人死亡、3人が負傷している。
このため、中央選管は国軍や国家警察などと連携して、7060バランガイを警戒対象地区、156バランガイを重点警戒対象地区に指定し、選挙に絡む殺傷沙汰を警戒を強めている。
警戒バランガイの多い地域は、現在も政府軍と反政府武闘組織が対峙している南部ミンダナオ島地域で、コタバト、南コタバト、スルタングダラット、サランガニ、コンポステラバレーの各州と、イスラム教徒自治区など。
マニラのあるルソン島では南部ビコール地域、ヴィサヤ地域ではセブ島近隣のマスバテ州(島)などが対象地域となっている。
このバランガイ組織は地域の行政や警察業務も行い、住民同士のもめ事で裁判沙汰になる場合でも、最初にバランガイ事務所に持ち込むのが慣例となり、身近なものとしては日本の住民票に当たる居住証明もバランガイが発行する。
また、政治的野心を持つが、フィリピンで最重要視される毛並みの良い一族出身でない場合、このバランガイ議員から始める例や、また毛並みの良い者であっても段階的にバランガイ議員から修業を始める者も多い。
【写真は前回のバランガイ選挙の様子】
|