テレビのアナログ放送方式は世界中でデジタル方式に切り替え進行中で、この巨大な利権を巡ってデジタル方式を開発している国が普及に向けてシノギを削っている。
現在、この地上デジタル放送(地デジ)システムは大きく分けて4種類あって、DVB-T(ヨーロッパ方式=図の青色)、ATSC(アメリカ方式=図の茶色)、ISDB-T(日本方式=図の緑色)、DTMB(中国方式=図の赤色)に分けられる。
多数派はヨーロッパ方式(現在64ヶ国)で世界中に万遍なく普及している。
日本方式(現在16ヶ国)は南米、中米を中心に採用が進み、アメリカ方式(4ヶ国)、中国方式(3ヶ国)は自国の範囲内、もしくは属国のような国でしか採用されずシステムとしては出遅れている。
こういった中、フィリピン政府は日本方式を採用する意向を日本の当局側に伝え、年内にも試験導入をすると言及。これはヨーロッパ方式が強いアジア地域では初の採用となる。
日本のシステムは地デジ変換器機がヨーロッパ方式より割高になる点が途上国では問題になっていたが、日本方式はワンセグ放送が同時に可能のため、災害の多いフィリピンには適していると、官民挙げて売り込みを図っていた。
この地デジ採用を巡っては2010年6月、前アロヨ政権末期に日本方式の採用が決まっていたが、続いて発足したアキノ政権が『アロヨ時代の巨大認可事業は汚職の可能性が高く、洗い直す必要がある』と、採用は反故にされた。
それ以降、日本方式とヨーロッパ方式の売り込みが激烈になり、ロビー活動の不透明さもあったが、今回決着の見込み。
今回の決着について、日本側は財界、業界の意向を受けた安倍首相によるアキノ大統領への執拗な『トップ・セールス』が効いたと自画自賛しているが、元々、フィリピン側の技術当局及び実際に運用するテレビ局は、最初から強力に日本を押していたから決まるべき所に決まっただけの見方もある。
しかしながら、同じトップ・セールスでも日本で不要になった原発設備を海外に売り込むよりはまだマシという声も強い。
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