上下院議員に毎年支給される巨額の『優先開発補助金』を巡って、架空のNGOを舞台にして補助金100億ペソ(約230億円)が、議員などにキックバックされた大型汚職事件に新しい局面が生まれた。
この事件に絡んでエストラーダ元大統領(現マニラ市長)の秘書だった女性が2月7日アメリカより帰国し、司法取引をして検察側の証人に立つ見通しとなった。
同女性は事件捜査の進む2013年8月下旬、アメリカに逃亡していたが起訴勧告対象者になってからフィリピン国内にある銀行口座などが凍結されて窮地に陥り、帰国を決意したものと見られている。
同女性は今後、司法省の保護を受けて同事件解明の検察側証人として関わる予定で、事件関係者はその推移を見守っている。
同事件では2013年9月、事件捜査を進める国家捜査局(NBI)が公務員の汚職問題を扱う行政監察院に38人の起訴を勧告しており、今回の証人の存在はかなり事件解明に寄与すると見られている。
この38人は①現職上院議員ではエストラーダ元大統領の息子ジンゴイ【写真】と前上院議長のエンリレとレビリアと元下院議員の5人。
②それら上下議員と元議員の秘書計8人。③補助金事業実施主体の政府関係者幹部5人と職員10人。
④疑獄事件の舞台となったNGOの幹部6人となっていて、今回アメリカから帰国した女性は③に含まれる。
同女性帰国を受けて司法長官は『アロヨ政権下で同女性はジンゴイ、エンリレ両議員に補助金のキックバック分を直接届けていて、その額は補助金全体の40%、本人自身も手数料として1.5%を受け取っていた』と記者会見で一部を明かした。
同事件は主犯とされ、現在別事件で拘束されている女性実業家の証言があいまいな所があって、補助金と議員の間をつなぐルートは解明できていなかったが、今回の証人は直接金のやり取りに関わっていて、具体的な解明に至ると見ている。
しかし『証言』重視で証拠収集能力のないフィリピンの司法機関がどこまで事件の真実に近づけるか未知数で、旧来の疑獄事件と同じように腰砕けで終わるのではとの危惧も相変わらず強い。
同証人と司法取引をして、検察側証人になることに対して、汚職撲滅を掲げるアキノ大統領は『証言内容が国益につながるなら、司法取引も許される』との見解を述べている。
|