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世界最多の人口を抱え、自国のエネルギーと食料供給問題を将来に抱える中国は、南シナ海のエネルギーと水産資源を狙って国際法などお構いない、周辺国を巻き込んで横紙破りの行動を続けているが、フィリピンも南シナ海の海域と島を巡って領有権争いに巻き込まれている。
この南シナ海はフィリピン側は現在『西フィリピン海』と命名し国内メディアもそれに倣い、国際的に認知されている『South China Sea=南シナ海』を忌避しているが、これは日本と韓国との間の『日本海』を韓国が『東海』と呼んでいるのと同じで、どちらも子どもの喧嘩と変わらず無益な行為であることは間違いない。
ただし、中国による南シナ海への実効支配は着々と進んでいて、1月下旬、フィリピンの排他的経済水域(EES 200カイリ)内に該当する南シナ海のスカーボロ礁(ルソン島中部スービック湾西方230キロ沖)で、この近くで操業していたフィリピン漁船14隻の内、礁近くで操業していた2隻に対してこの海域で睨みを利かせる中国の巡視船が数分間に渡って、放水銃で放水して操業を妨害、水域から追い払う事件が起きた。
これに対してフィリピン政府は『漁船に対する妨害行為は数多くある』と駐フィリピン中国大使館の代理大使を外務省に呼び強い抗議を行った。
ところが中国大使館側は『中国の領土であることは自明であり、何をしようとこちらの勝手、フィリピン側のこの手の抗議は受け付けない』とけんもほろろの声明を出した。
こういった中国側による同礁での漁船妨害事件は2013年で確認されただけでも9件あり、国際法上で認められている悪天候による緊急避難で同礁に避難した漁船も中国の巡視船に追い出される例もあった。
この水域の領有権を巡って、中国側は強大な軍部の意向もあって決して妥協を示さないために、フィリピンは交渉では中国は動かないと見て、この手の紛争を解決させるために設けられた国際機関の『仲裁裁判所』に提訴して、問題を計っている。しかし、相手となる中国が加わらないため、欠席裁判の様相となり、見通しは暗い。
こういった中国の態度に対して、アメリカやオーストラリアなどは中国に対して『現状を変えるような一方的な企ては拒否する』とけん制を行い、また、アセアン諸国連合(ASEAN)に対して、南シナ海問題を解決するために、中国を枠組みにした制裁措置を伴う行動規範を策定するべきと動いている。
しかし中国側によるアセアン諸国内の親中国派カンボジアの妨害に会い、昨年のアセアン首脳会議では声明を取りまとめられなかった異例の事態にまで発展し、この問題の難しさを浮かび上がらせた。
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