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現副大統領のビナイ【写真】は、2016年5月に行われる次期大統領選への立候補を野党陣営から出馬する構えで着々と準備を進め、世論調査でもトップの支持率を集めていた。
これに対してアキノ以降を死守したい与党陣営は、前回大統領選(2010年)でアキノ現大統領と組んで副大統領に立候補し、ビナイに僅差で敗れたロハス(現内務自治長官)を押す様子となっている。
しかし、ロハスは祖父が元大統領、マニラ首都圏のクバオを始め広大な土地や企業を擁する財閥一族の人間で、妻は有名なニュースキャスターと、フィリピン人の好む名門出身だが、そのエリート臭さが今一つ人気のない理由ともなっている。
一方、ビナイは弁護士となり、外国企業が集まるフィリピン有数の富裕市マカティ市の市長を1989年から6期18年、市長の座に君臨し、副大統領選ではこちらもフィリピン人が好む、貧乏な家系出身、苦学生を売り物にして票を集めた。
ところが、フィリピンには首長や議員職の公職に1期3年3期以上は連続してできない法律があって、3期目が終わると身内を立てて次期の地盤を守るという手が普通に使われている実態がある。
ビナイの場合妻が身代わりとなって1期を務め、その後またビナイが3期務める手が繰り返され、ビナイが副大統領選に立候補後は息子が跡目を継ぎ、この結果ビナイ一族によるマカティ市支配は現在までに27年間も続いている。
また、ビナイの長女はビナイ人気に便乗して、24人しかいない上院議員に当選、次女もマカティ市を地盤とする下院議員と、新『ビナイ王朝』とささやかれマカティ市では盤石の構えを見せていた。
こういった構図は選ぶ選挙民に一番問題はあるのだが、アメリカ型民主主義を標榜するフィリピンも実態はスペイン植民地時代と変わらない政治風土が根強く今も続いているのが実態。
一族による長期支配の弊害は当然あっても、ビナイ一族の強大な権力によって隠蔽されていたが、ここに来てアキノ政権側によるビナイ追い落としの動きが顕著になり、次々と暴露されている。
10月16日、司法長官は国家捜査局(NBI)に対して、ビナイの在任中の次の疑惑について捜査するよう命じた。捜査対象は①マカティ市2号庁舎建設費巨額水増し問題、②市が管轄する事業認可など巨額な裏リベートの有無、③ビナイの隠し財産といわれる広大な農園の存在など。
これらの疑惑はビナイが市長をしていた時代の元副市長らの告発によって明るみになったのだが、その信憑性を巡っては泥試合の感もあり、証拠に基づいた立証ができるかどうかが今後の問題となる。
また、NBIの捜査以前に公務員の汚職を取り扱う『行政監察院』も調査は進んでいて、上院でも汚職問題を扱う『ブルーリボン委員会』も調査を始めている。
下院でも一連の疑惑に対してビナイを弾劾にかける動きが出ている(正副大統領は議会の弾劾のみにしか辞めさせられない)。
これらの包囲網に対してビナイは『政治的な陰謀だ』と否定し、ビナイは証言を求められたブルーリボン委員会の出席を拒否。最近では自己の疑惑に対してアキノ大統領と直談判し、何らかの話が持たれたとの話が流れている。
こういった一連の疑惑のためビナイの支持率は急激に下降し、仕掛けた側の目論見は成功しつつあるが、まだ大統領候補者としての支持率はトップを堅持している。
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