
長年のミンダナオ島での武力紛争を解決するものとして、アキノ現政権下で進められている『バンサモロ基本法』は上下院で審議が行われているが、2月6日から始まる大統領選以下の選挙運動が始まるために休会となり、今国会での成立は不可能と上下院議長が見通しを示した。
この法案はミンダナオ島で武闘を繰り広げていたモロ・イスラム解放戦線(MILF)とアキノ政権が合意し、法案化したもので、従前のイスラム教徒ミンダナオ自治区(Autonomous
Region in Muslim Mindanao=ARMM)を失敗とし、新たにバンサモロ自治区(Bangsamoro Autonomous Region)を設ける。
これは軍事・警察権、外交権や通貨以外は全面的に認める、半ば独立国のような形を認める画期的な法案となっているが、またフィリピン憲法に抵触するとして数々の疑義が出されている。
アキノ政権は上下院とも多数派を占めているが、昨年1月にミンダナオ島で発生した警察特殊部隊とMILFが衝突し、双方で68人もの死者を出した事件で成立への風向きが変わり、暗礁に乗り上げていた。
この事件では野党側は大統領選や上院選に出ている候補者も政治的に利用し、指揮官としてのアキノ大統領や当時の内務自治長官だった与党大統領候補のロハスに責任あり追及を行っている。
こういった膠着状況から和平交渉に当った双方から、法案が成立しないとこれに不満を抱いたMILFメンバーから離脱者が出て、新たな武闘組織を作る恐れがあると警告されている。
現在でもMILFが政府と進める和平交渉に不満を持った分派が武力闘争中で、この不満分子が、中東のイスラム国(IS)がミンダナオ島で活動中という情報も流れている中結び付く可能性があり、新たな火種を抱えることとなる。
このISに関しては政府発表では確認されていないとされるが、既に1000人単位でISはミンダナオ地区で募集し終えたとの情報も流れている。
アキノ政権はバンサモロ自治区成立を最重要とし、任期内での発足を目指したが、上下院審議が止まる事によって、成立不可能となり有終の美を飾る事は出来なかった。
次に発足する政権にこの問題のバトンを渡さざるを得ないが、歴代政権はミンダナオ島和平に対して対応が違っていて、次期政権がどのように扱うか見通しは立っていない。
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