エル・ニーニョ現象によってフィリピン国内は長期間に渡って雨が降らず、特に天候頼みの農村部には旱魃による被害が広がっている。 こういった中、ミンダナオ島南部コタバト州キダパワン市(人口13万人以上)で政府にエル・ニーニョ対策を求めて農民団体が動員した4000人以上が、3月30日から幹線道路を封鎖。
これに対して4月1日、道路封鎖解除を求めた市当局と警察、国軍の警備当局が衝突し、投石で抵抗したグループに対して発砲する事態となり、農民側に死者2人、負傷者は警備側40人以上を含む140人に達した。
農民側の道路封鎖は市当局に対して食糧庁が保管する米1万5千袋を要求した事から始まり、それに対して市当局は『米は中央政府の管理下にあり、市の権限では配布できない』と突っぱねたため、動員された農民側が強硬な行動に出たために起こった。
しかしながら、警官隊が発砲した行為について政府機関の『フィリピン人権委員会』は事態を重く見て、調査班を派遣。この調査によって『警官隊の過剰防衛があった』と指摘した。
これに対して一方の当事者である警察を管轄する内務自治省の責任者は『許容範囲だった』と正当性を主張し、人権意委員会の見解と真っ向から対立している。
また、上院の司法人権委員会も事実関係を調査するために、衝突事件のあったキダパワン市に近いダヴァオ市で公聴会を開き『警官隊による過剰警備および人権侵害』があったと認定。
批判が高まる中、国家警察は責任者であるコタバト州警察本部長を更迭したが、事件解明については非協力的な状態を続けている。
この事件に対して政府はアキノ政権末期にこういった事件が起きたことを遺憾としながらも、『現在行われている選挙戦の政争の材料にされる恐れがある』と表明。
根本的にはエル・ニーニョ現象による農村の打撃に対して政府が無策状態を続けたことが引き金となっていて、今後全国的に旱魃地帯での抗議活動は増えると見られている。
旱魃による被害は農村部だけではなく、例えばセブ市や周辺地区でも1日10数時間に渡る断水措置が始まり、こういった天災は予測されているにもかかわらず、選挙に勝って自身の地位を保つしか興味のない政治屋連中の危機意識は低い。
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