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フィリピンが中国を相手取ってオランダ・ハーグにある『仲介裁判所』に提訴していた南シナ海における紛争問題は、7月12日、判決が出てフィリピンの主張する内容が認められる全面勝訴となった。【写真は南シナ海上空】

仲裁裁判所は国連海洋法条約で国家間の紛争解決を目的に設置された国際常設裁判所になるが、国際海洋法裁判所や国際司法裁判所と違い領有権を巡る判断は出来ず、また判決に対して当該国は従う義務はあるが、強制執行出来ない弱点を持ち、今回の判決がどれだけ効果があるかは疑問視されている。
そういった弱点を見込んで、中国政府は仲裁裁判所を無視し、法廷の場に一切加わらず自国の南シナ海における支配は正当であると宣伝をしていた。
裁判は2013年1月から始まり、中国が南シナ海に定めた『九段線』という、南シナ海の総面積約330万平方キロの90%を占める無謀で一方的な囲い込み主張から始まっていて、その囲い込みはフィリピンはおろかヴェトナム、マレイシア、ブルネイ、インドネシアの領土近くまで迫っていて、関係各国との紛争となっている。
この九段線は第二次世界大戦後に当時の中国を支配していた中華民国が1947年、一方的に十一段線を定めた事から始まっていて、その後の中国大陸の覇権者である中国が、ヴェトナム海域を縮小して九段線としたことから始まっているが、何れも根拠のない事が今回の判決で示された。
近年になって、中国政府は囲い込んだ海域にある岩礁を埋め立てて、滑走路や港湾施設を次々と建造し、軍事的実効支配を強め、これに対して仲裁裁判所は中国の埋め立ては違法、環境を損なう行為と断罪されている。
しかしながら、中国は今回の判決は無効であると一貫して主張していて、軍事支配の手は今回の判決による国際的批判を無視し一掃増強すると言明している。
このような南シナ海での紛争は現習政権から顕著になったもので、今回の判決によって習政権に国内から批判の手が上がるのは必至と見られている。
これに対して習政権は国内経済の不調から、批判の矢を外交問題にすり替える常套手段を駆使し今回の事態を乗り切る腹積もりで、従来からの中国の援助という名の経済植民地である一部のアセアン加盟国やアフリカなどの国々の支持を取り付けているが、国際司法の場で断罪されたことは今後の中国の立場を危うくすることは間違いない。
今回の判決で中国が埋め立てた島々は支配権が無い事が確認され、アメリカなどは航行の自由が担保されたとして、従来以上の作戦を南シナ海で展開するものと見られているが、中国側も一層強硬策に出るのは間違いなく、過去の歴史が証明するのは軍の暴発であり、緊張は高まっている。
こういった事態の中、日本の安倍自民党政権はアメリカの尻馬に乗って南シナ海で自衛隊の作戦を目論んでいて、先日の参議院選で思うままに政権運営の出来る議席を得た勢いで暴走する恐れも出ている。
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