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意味不明の言動でアメリカ、日本、中国を手玉に取って得意満面のドゥテルテ大統領だが、1番の目玉として強硬に推し進める『麻薬撲滅』に対して、政権が述べている麻薬問題の根拠となる数字、成果などの多くは根拠が薄弱、あるいは都合の良い数字で塗り固められているとロイター通信の調査で明らかになった。
ロイター通信はフィリピン在職の記者がドゥテルテのヒットラー発言を取り上げたために、ドゥテルテを狂信的に支持する国内のSNS中毒者から猛烈な槍玉にあがって、身の危険を感じて隠れているような有様で、これに対してジャーナリストしての矜持を示すためにあえてドゥテルテを取り上げている。
麻薬容疑者に対する有無を言わせない殺害はドゥテルテ政権発足以来、4000人を超えたと言われ、これが民主主義の法治国家かと批判を浴びていても、誇大妄想の大統領は逆切れし、それを支持する国民は事実を知ろうとしないでドゥテルテの超法規殺人を正当化、後押しするような有様で狂気への道を共に歩んでいる。
10月12日、マニラで演説したドゥテルテは『麻薬取締で毎日2人の警官が死んでいる』とぶち上げたが、実際は警察の統計ではドゥテルテが就任した7月1日から演説のあった日までに殺害された警官は13人、8日に1人であって明らかにドゥテルテは誇張している。
ドゥテルテが最重点課題として取り組んでいる麻薬対策の根拠は『国内に370万人の薬物中毒者が存在する』と、就任後最初の演説でその危機感を煽ったが、政府機関の大統領府危険薬物委員会(DDB)が行った2015年の調査では違法薬物利用者はドゥテルテが挙げた人数の半分にも満たない180万人であった。
しかも、ドゥテルテは麻薬使用者全部を『中毒者』と指弾しているが、180万人の内3分の1に当る60万人は過去13ヶ月間に1度しか薬物を使っていないのが実態である。通常、『麻薬使用者』というのは過去1ヶ月以内の使用者を言うのが統計上の基本で、ドゥテルテの挙げる数字は全てを一緒くたにした都合の良い数字を述べているに過ぎない。
また、習慣性の強い覚醒剤(シャブ)を使用したのは半分以下の86万人であって、その他大半はマリファナ(大麻)使用者であった。ドゥテルテの進める政策は依存性が高く、副作用の強いシャブ使用の重度の麻薬常用者と一部の国で解禁されタバコより害のないマリファナ使用者との区別もつかない非科学的、扇情的なやり方と指摘する専門家の見解は正鵠を得ている。
ドゥテルテが9月にラオスで行われたASEAN首脳会議席上で配った資料の中に書かれた『重大犯罪の75%は麻薬絡み』も、これを裏付けるデータは重大犯罪を扱うフィリピン国家警察捜査局(DIDM)の担当部署にロイターが確認を求めた所、そういった数値の算出方法など説明できず、そもそもDIDMはそういったデータや分析を発表したことはないと驚くべき説明がなされている。
また、75%の数値に付いてDIDMの凶悪犯罪を担当する係官からは『麻薬が絡んだ凶悪犯罪は15%』との発言が成され、DDBの責任者は『麻薬の影響下で行われた犯罪についてフィリピンは何のデータも持っていない』と、ドゥテルテの誇張、捏造が明らかになった。
こういった数字上の指摘に対して政府当局者は、麻薬がなくなれば良い事で意に介さないと情緒的に説明し、ドゥテルテの過大、過剰な政策を正当化し、このドゥテルテの恣意的な数字のため、政府当局や警察などは数字に合わせるように取り締まりを行っていることが濃厚となっている。
例えば薬物使用者の『自首』について、過去3ヶ月間で70万人以上の自首があったが、DDBの報告書にある180万人の軽微な利用者を含む違法薬物使用者に合わせて180万人の自首者リストを作成するよう対策を進める当局から過大に求められているという。
この自首者についても深刻度は不明で、医学的な診察を受けたのかもどうか分からないと医療関係者は述べ、数字だけが誇大化され、問題のシャブ使用者でも実際に医療施設で治療が必要なのは10%から15%に過ぎないという医学的統計もある。
そのためDDB は世界基準でフィリピンを試算すると麻薬使用者の0.6%程度が常用者で、治療が必要と見ている。これは1%程度と数字を上げても、フィリピン国内の麻薬使用者180万人に適用すると、最大で、1万8千人程度が治療を必要とする中毒者であり、ドゥテルテの進める政策はかなり誇大、虚偽の数字で進められていると分かる。
10月5日、フィリピン上院公聴会で提示された国家警察統計では今年1月から8月にかけて重大犯罪件数は前年同期に比べて31%減少したと、警察幹部はドゥテルテの政策は正しいと証言をしたが、前任のアキノ政権時代の2015年の同時期は22%減少、2014年には26%減少、容疑者を殺害する強硬手段を用いなくても犯罪は減っている事実も判明している。
しかも公聴会で警察が示した31%の減少はアキノ前政権が5月末まで続き、それを引き継いだドゥテルテ政権はアキノ政権時代の実績を都合良く、我が手柄のように扱っていると批判されている。
ドゥテルテはダヴァオ市長を22年に渡って君臨し、ダヴァオ市を犯罪のない市にしたという看板で大統領選を勝ち抜いたが、国家警察の犯罪統計によると、実情はドゥテルテが市長在任中の2010年から2015年の間フィリピンの15大都市の中で、殺人件数1位(これには暗殺団による件数も含まれているだろうが)、強姦件数2位に入っていて、凶悪犯罪が一層されていない事が暴露されている。
ドゥテルテは市長時代に暗殺団を組織し、犯罪者を抹殺して市内の治安を正常化したと豪語し、その方法を国政レベルに延長させたが、必ずしも強硬措置が犯罪を減らす効果にはならないことを知るべきと批判されているが、聞く耳を持たず、今や精神分析の立場から検討する必要があるとまで言われている。
現在ドゥテルテは71歳、平均寿命の短いフィリピンでは既に後期老人に入り、老人性の誇大妄想ではないかの疑いもあり、その眼で観察するとドゥテルテの言動は腑に落ちる。
こういう人物を一国の指導者として頂くフィリピン国民も災難と言えば災難だが、自ら投じた一票の重さと失敗を今後知る事になるであろう。なお、ドゥテルテは大統領選では圧勝したと報じるマスコミは多いが、得票率では過去の大統領選と比べるとむしろ少ない得票率となっている。
ドゥテルテの得票率は34%台で、前任のアキノは42%台、悪評のアロヨにしてもドゥテルテよりはるかに良い40%近くを得、途中で止めた無能なエストラダにしてもやはり40%近くの得票率があって、ドゥテルテの得票率は戦後の大統領選勝者でもかなり低い数字で、ドゥテルテは次点に大差を付けたが得票率ではようやく当選が正解である。
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