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第2の『独裁者マルコス』になるのではとの評価もあるドテルテ大統領は、任期中の施策を遂行し易くするために『戒厳令』を利用しているとの指摘が反対派からは強い。【写真は戒厳令再々延長に反対するマニラで行われた抗議活動】

ミンダナオ島全域に布告されている戒厳令は2017年5月に起きた南ラナオ州マラウィ市の国軍とイスラム武装組織との内戦をきっかけに、その年の12月まで延長された。
鎮圧後にもミンダナオ島地域の平定を保つために戒厳令は2018年一杯まで延長されたが、戒厳令について許否を決める上下院議会はドゥテルテ政権下では、唯々諾々となっていて全く議会としての機能が果たせない状態となっている。
この戒厳令の再々延長が12月12日に開かれた上下院合同議会で賛成多数で承認された。
反対に回ったのは前アキノ政権を支えた自由党やリベラル・グループで、下院議員は賛成223人、反対28人で、これは予算措置で賛成する下院議員の地元に重点的に金が落ちる仕組みが功を奏している。
また、上院議員では12人が賛成、反対は5人のみであった。
戒厳令は軍や警察が法律的手続きを経ないで、身柄を拘束できることから、治安当局にとっては便利な代物で、これによって人権侵害が多数起きている。
今回の再々延長の理由について、治安当局はミンダナオ島にまだ武闘派が潜んでいて必要と述べているが、ドゥテルテ政権に反対する人々を弾圧するための口実との批判が強い。
また、ドゥテルテ王国の地盤、ダヴァオ市とミンダナオ島で展開されている巨額利権の絡むインフラ投資を守るために戒厳令を利用しているとの指摘もある。
また、ドゥテルテは故意に危機感を煽って、戒厳令の全土布告を狙っているとの分析もあり、実際セブ島の隣のネグロス島やサマール島などに『現地が不穏』というもっともらしい理由を挙げて、治安部隊の増派を行っている。
こういう理屈だと犯罪の発生が高いマニラ首都圏でも戒厳令布告は可能となり、この手口はマルコスが戒厳令を長きに渡って布いていたのと同じで、ドゥテルテは任期の終わる2022年を無視するために戒厳令を布告して長期独裁政権を樹立するのではないとかの話さえ流れている。
これを単なる噂話とするかどうかはそれぞれであるが、再々延長されたミンダナオ島全域の戒厳令は、ドゥテルテ政権による全土布告の予行練習と見ると、今回の議会の承認は議会を完全掌握していたマルコスの手法の再来と見る向きもある。
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