フィリピンの下院議員は地方選挙区と政党比例の2本立てで選出され、その定数は現在304人。

何処の選挙区も多くは一族代々の利権と化した『世襲』が跋扈し、現代の『政治王朝』と批判、揶揄されているが議員側も選挙民も改める気配はない。
その下院の議長は、2016年の正副大統領選にドゥテルテと組んで副大統領選に立候補し落選したカエタノだが、10月12日に同人に反対する議員グループから議長の座を引き摺り降ろされた。
新議長にはヴェラスコが選ばれたが、下院の議長職を巡っては元々新議長選出時に揉めて、ドゥテルテの裁定で議長任期を分割して最初はカエタノ、次にヴェラスコに譲る経緯があった。
しかし、カエタノは交代時期の10月になって取り決めを無視し議長職に居座る様子を見せたために今回の解任劇に繋がった。
フィリピンの政党は離合集散が激しく、現在の最多党派でもドゥテルテを擁する党が60人足らずで、30人~40人程の党派に数人程度の党派、計20の党が与党となっている。
それでも与党は総数269人の絶対多数で、野党で前アキノ大統領を生み、現副大統領のロブレドを出している党などたった数人という具合で、浮き沈みが激しい。
これは時の大統領に付いた方が良いという利害から出るもので、選挙後の議員の党派の離脱、集合は年中行事のようになったいる。
今回、カエタノが議長職に居座ろうとしたのは自らの不祥事を議会から追及されるのを防ぐためといわれているが、2022年の正副大統領選に立候補するための居座りとも指摘されている。
解任劇に納得しないカエタノ派議員グループは『これはクーデター』と徹底抗戦を叫んだが、大統領筋の説得でヴェラスコが正式に決定した。
この説得は2022年大統領選に立候補するために巧妙に世論作りをしているドゥテルテからダヴァオ市長職を世襲した長女が動いたと見られていて、カエタノ潰しは自らの立候補に障害になるためとの見方が強い。
こういった下院議長の座を巡ってのドタバタはコロナ禍で隠れていたが、利権や思惑で動く議員連中に対して批判は強いものの、世襲という安楽椅子に包まれた議員連中には痛くも痒くもない。
【写真はフィリピン下院の議場】

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