アメリカの超党派議員24人が、フィリピンで深刻な人権侵害が行われていると、その背後にいるドゥテルテ政権の現職閣僚や警察、軍の元高官5人を名指しで非難し、国務長官や財務長官に対して制裁措置を取るよう要請を行った。

名指しされた閣僚の1人は国軍出身のアニョ内務自治大臣は2007年当時自身が率いる部隊が農民運動家の誘拐に関与、2015年にはミンダナオ島出先住民殺害に関与など人権活動家への攻撃が目立った。
2人目はロレンサナ国防長官で、現政権下で2017年5月から2019年末までミンダナオ島に布かれていた戒厳令の責任者として軍、警察による人権活動家への弾圧を容認した。
3人目のエスペロン現大統領顧問安全保障担当はアロヨ政権下で人権活動家数百人の殺害、失踪、拷問に関わったとされている。
4人目はバルラデ元国軍中将で、政府の反共機関の広報担当を務め、政府に批判的な個人や団体にいわれなき共産主義者のレッテル張りをして攻撃している。
5人目はシヌス元国家警察長官で、2021年にルソン島南部で労働組合員や人権活動家9人が殺害された事件で指揮を執ったと目されている。
こういった治安関係者が重用されているのもドゥテルテ政権の特徴で、政権高官には元軍高官、元警察高官が多く名を連ね、強権的な体質が滲み出ている。
超党派の米議員がこれら5人に制裁を求めているのは、在米資産の凍結、或いは米国ヴィザの取り消しなどで、アメリカに移民の親戚が多いフィリピン人としては痛い措置になる。
実際、元ダヴァオ市警察署長から上院議員になったドゥテルテの腰巾着といわれる人物はアメリカのヴィザが取り消され渡米出来なかったことがあった。
こういった動きに対して政権側は沈黙を通しているが、本年5月に行われる正副大統領選でドゥテルテの弾圧路線を踏襲する候補者が有利な状況となっていて、暗い政治状況が続きそうである。
【写真はワシントンD.Cにあるアメリカ国会議事堂】
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