8月29日午後12時過ぎ、ミンダナオ島コタバト州カバカン町(人口5万人超)にある州道で、農民や高校生など9人が射殺される事件が起きた。

事件のあった現場は、大学にも近く交通量の多い場所で検問が行われ多くの人が居たが、6台のバイクに乗った被害者は選び抜かれる形で身分証の提示を命じられた。
被害者の一人、17歳の高校生は直後に父親に『警察に停止を命じられた』と電話連絡をしていて、その最中に電話から銃声が聞こえたとの証言が残る。
これを裏付けるように目撃者は『殺害された9人は至近距離で撃たれた』と証言している。
ただし、フィリピンの目撃者は警察や軍などから圧力をかけられると証言を翻す、だんまりを決め込むためにこういった証言はやがて地に潜ってしまい、捜査、裁判の障害ともなっている。
また、銃撃後に病院に運ばれ4時間後に死亡した別の17歳は殺害者は病院で警察との証言を親族に残していて、警察が関与したことが濃厚になっているが、国家警察のコタバト州本部長は『憶測でに過ぎないと』と打ち消しに必死になっている。
事件で殺害された9人は、バンサモロ・イスラム自治政府(BARMM)の出身者であるために、同暫定統治機構も『武装し検問を行えるのは軍か警察しかいない』と強く非難した。
また、中央の人権委員会も事件を重視し、高性能銃が使われたために『警察による犯行の可能性が高い』と見て調査を始めた。
警察や軍が農民活動家や人権活動家を狙って殺害することはフィリピンでは数多く発生していて、最近でもセブ島隣のネグロス島のサトウキビ栽培農民活動家への大量殺害が起きている。
これに対して、犯人解明は全く進んでいなくて『泥棒に金庫番をやらせるようなフィリピンでは無理』と自嘲の声も流れる。
こういった事件が頻発するのはドゥテルテが人権よりも強権をスローガンにして大統領に当選したことと関係が深く、この手の人権侵害事件が収まる気配は全くない。

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