フィリピンの主要経済官庁に国家経済開発庁(NEDA)というのがあって、フィリピンの経済政策を一手に担当している。ここはまた出来もしない経済政策を美辞麗句でぶち上げるのでも有名だが、先頃、この長官が社会経済政策基幹の『フィリピン開発計画=対象期間2011年から2016年』の進捗状況について正直な報告を行った。
同計画の中で重要項目だった『貧困削減』について、アキノ政権が発足以来、貧困率はいくらか低下傾向と捉えるものの、現在の高度な経済成長率7~8%を今後維持できたとしても貧困率が大きく低下するのは10年から20年先である見通しを示した。
この場合の10~20年かかるという表現は政策が実現不可能と同義語の表明と見て良い。
この貧困率というのはフィリピンの場合、2012年基準では1世帯(5人家族)当り、平均月額7821ペソ(約1万8千円)を得ている貧困ライン以下の国民の割合を指すが、この他に『極貧ライン』というのがあって、こちらは月当たり5458ペソ(約1万2千5百円)。
こういった政府高官が正直に自らの経済政策の問題点を表明するのは珍しいことで、同長官はタイや中国などの例を挙げて『貧困率の削減には長い時間が必要で、フィリピンの場合、経済成長率はあっても大きな自然災害を受ける地理、気象上の問題がある』と、述べているが問題点のすり替えではないかと識者から指摘されている。
2012年現在の貧困率は同庁発表では25%強となっているが、それは統計数字であって実際は同庁が指針としている月収を得る家庭など地方へ行けば行くほど低い実態がある。
それにも関わらず同長官は策定したフィリピン開発計画の最終年の達成目標値と定めた18~20%を、2016年までの残る2年間で5%以上削減させたいと述べているが、具体的な見通しは立っていない。
こういった事態に至っているのも、フィリピンは近年、東南アジア域内では最高の経済成長率を誇りながら、その恩恵が下に及ばない経済構造に問題があるわけで、評論するのではなくそちらにメスを入れ、改革するべきという声は四方八方から上がっている。
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