
大統領としての基本的な資質が問題ではないかと指摘されているドゥテルテ大統領だが、6日からラオス・ヴィエンチャンで開催されているASEAN首脳会議を前にして、アメリカのオバマ大統領を下品な言葉で罵り、会議で予定されていた比米首脳会談は取り消しという前代未聞の事態が出来した。
罵った内容はドゥテルテが強硬に違法薬物容疑者に対して推し進める超法規殺人に対して、アメリカ側が人権の観点から懸念を表明していて、会談の席上でその問題が取り上げられるのを焦ったドゥテルテが、牽制の意味で放った暴言だが、そのセンスは街のヤクザ並みで、外交儀礼に著しく反した。
フィリピンとアメリカの関係は、フィリピン人が最も憧れる国がアメリカであり、アメリカに在住するフィリピン人は400万人を超すと言われ、これには100万人以上の不法滞在者も含まれ、アジア系では中国系と在住者数を競っている。
また、フィリピンは二重国籍を認めているために、アメリカ国籍を持つフィリピン人も多数居て、アメリカに移住してアメリカ国籍を得るのが夢となっている。
こういった状況で移民に対して寛容の失せつつあるアメリカ国内の自国民が、嫌がらせをされる可能性もある暴言を放ったドゥテルテに対して、内外のフィリピン人から批判の声が起きている。
一方、この発言は計算されていて、南シナ海を巡って、アメリカ、日本などが中国の覇権主義に対して異議を唱えており、また、中国に対して先の国際仲裁裁判所の提訴国のフィリピン側完全勝利を後ろ盾に、中国及びアメリカ、日本などから経済援助を引き出すための作戦ではないかとの見方もある。
そういった危ういバランスで舵を取ろうとしているドゥテルテの手法が国際社会で通用するかどうか問われているが、外交デビューを卒なくこなし、名声と信頼を各国首脳から勝ち得ているミャンマーのスーチー国家最高顧問を見習ったらどうかとの指摘もある。
また舌の根も乾かない内に前言を取り消す軽さも大統領として信用できないとの声もある。
なお、当初、激怒を伝えられたアメリカは、南シナ海に臨む重要拠点である同盟国フィリピンを離反させることは、戦略上不味いと判断し、取り消しから日時未定の延期が発表されている。
【写真はASEAN首脳会議が開かれているラオス・ヴィエンチャン市内】
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