|
前名が『住商フルーツ』というように、日本の大手商社住友商事傘下の『スミフル』で働く従業員達が、正規雇用要求や組合員に対する弾圧を止めるように12月18日、首都圏パサイ市にある日本大使館前や、同社マニラ事務所前などで抗議活動を行った。
同社はフィリピン産バナナの生産、加工、輸出販売で日本の最大手で2016年度3月期の売り上げは452億円。
以前よりスミフルを筆頭にミンダナオ島地域で大量生産されるバナナは、農薬散布の弊害が指摘されていたが、同時にバナナ生産に携わる労働者の待遇、権利などが劣悪な状態であることが明らかになっている。
そういった労働条件の改善を求めて同社従業員は10月からストライキを実施しているが、会社側の息がかかっているとみられる反対派によるストライキ破りの襲撃が相次いでいた。
10月31日にはストに参加していた組合員が銃撃を受けて死亡し、別の日にも他の組合員が銃撃され負傷をした。
また、組合指導者宅が11月2日に反対派と見られる人物によって放火され同日は消し止められたが、15日に再び放火され全焼した。
同指導者宅は組合の事務所として使われていて、組合が裁判で使っていた資料が全て失い、指導者への嫌がらせと共に裁判潰しを狙った犯行と見られているが、捜査機関はほとんど動いていない。
ミンダナオ島の主要産業であるバナナは、日本などの大手資本が自前の大農場を広げ、あるいは契約農家として栽培させ日本へ輸出しているが、ほとんどの労働者が臨時雇用状態で、サトウキビ農民と同じ『奴隷状態』とまで言われている。
ミンダナオ島を地盤とするドゥテルテ大統領は6ヶ月働いて、次は解雇というフィリピンの悪しき労働契約を改革するために正規雇用を推進しているが、実態はなかなか進まず、特に農業関係は掛け声だけに終わっている。
こういった実情に対して、親会社である住友商事は『スミフルはシンガポール・スミフルの子会社で住商とは直接関係ない』と人を食った立場を表明して『傍観』。
日本企業のフィリピン進出ではストライキが少ない、賃金が安い、非正規雇用者は6ヶ月で首が切られて次はいくらでもあるといった理由で決められることが多く、これは列国による植民地時代と同じと批判されるが、貪欲な経営者はフィリピンにも人権が存在することに関心は薄い。
スミフルの労働組合の今回の直接抗議行動はミンダナオ島同地から組合員が不退転で実施され、同組合員は泊まり込んで抗議活動を続けている。
この事態を受けて労働雇用省は正規雇用化とスト破りの停止を求める組合側とスミフル幹部、労働雇用省長官3者を交えて話し合いの場を持つことを確約。
同時に現在ミンダナオ島に布告している戒厳令による軍や警察による組合への嫌がらせを止めるように指示すると言明するが、政府絡みで組合を弾圧している実態が図らずも明らかになった。
また、日本の人権を支援するNGOなどが、住友商事に対して『正規雇用化』問題を現地任せにしないで対策するべきなどと申し入れを行い、スミフル問題はミンダナオ島だけの問題ではなくなった様相を見せている。
|