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 ドゥテルテ大統領がシンガポールでダヴァオ市長在任中に『犯罪者3人を自分の手で殺害した』発言は、フィリピンでは3面記事並みの扱いで、政権が進める違法薬物容疑者殺害作戦は勢いをとどまらず、既に政権発足後の半年間に6000人を超えた。
この状況に対して国連は人権侵害の観点から調査を行うことにし、アメリカは部分的な援助停止を決めたが、これに対して同大統領は国連やアメリカを頼ることなく、中国やロシアから援助を引き出せばアメリカには用はないと公言している。
前アキノ政権が中国を相手取って南シナ海全域における支配権の無効を求めて国際仲介裁判所に訴えた裁判では、中国側完全敗北の結果を招いたが、結果を無視する中国は実効支配を同海域でさらに進めている。
しかし、ドゥテルテは10月に中国を訪れ、多額の中国による援助と投資と引き換えに、同海域におけるフィリピンの主張を事実上棚上げた。
中国訪問後に日本を訪れた同大統領は安倍首相と会談して先の仲介裁判所による南シナ海の裁定を尊重し、日本と認識を共有すると言明し、南シナ海の自由航行のために自衛隊機5機をフィリピン海軍に無償供与、同パイロットの訓練など合意していた。
また、アキノ政権時代に中国封じ込め策の一環として安倍政権はフィリピン沿岸警備隊(PCG)に2018年までに日本製の巡視船10隻を円借款で供与する計画が進行中で、12月8日には2隻目の巡視船【写真】がPCG側に引き渡された。
こうして今まではドゥテルテの取り込みに成功したと見ていた安倍政権だが、12月16日、PCGと中国沿岸警備隊(CCG)は両警備隊の協力関係を推進するために両国間で合同沿岸警備部会(JCGC)を設置することに合意し、日本の対南シナ海対策援助が意味をなさなくなる事態が出来した。
中国の沿岸警備隊は軍と同じ役目を担っていて、従来の沿岸警備隊とは違う活動を南シナ海に展開中で、今回の合意によって日本側が国際協力機構(JICA)が長年に渡って協力、実施してきたPCGへの警備能力向上事業の見直しを必要ではないかと指摘されている。
こうして、ドゥテルテは一貫して中国寄りの政策を着々と進めているが、その政策に対して、場当りで見通しのない日本の外交、安保政策は先のロシアのプーチン大統領との日本における首脳会談で露呈したように、長期政権への野望しかない安倍首相への能力にも疑問が出始めている。
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