|
先の戦争での日本人戦没者は約240万人といわれている中、フィリピンは一番多く51万人を超えている。

ただし、この数字は旧軍人の数であり、軍に属さない在留邦人など多数、またフィリピン側民間人は100万人を超える多大な死者を生んでいる。
これは日本が侵略した国でも同様だが、その中で1952年に日本政府は戦没者遺骨収集事業を開始し、フィリピンは1958年から始まった。
戦争で死んだ者は等しく犠牲者であり旧軍人だけを収集するその考えには異議もあったが、遺骨収集事業は進められて、山野に眠る遺骨は次々と納められたが、現在フィリピンでは37万人分が収集されていない。
こういった中、2006年にフィリピンの遺骨収集を目的とする民間団体(NPO)『空援隊』が発足し、活動を始め、厚労省はこのNPOに遺骨収集事業を委託し補助金を出すようになった。
2008年になって、遺骨収集方法を地元民の証言を基に旧日本兵の遺骨とする新しい方法を取り入れ、前年の2007年は161柱であったのに2008年は1230柱、2009年7740柱、2010年は半年で6289柱と収集数が激増した。
それと同時に、フィリピン各地の墓地などから先祖の遺骨が盗まれる事例が多く発生し、盗まれた先住民族などから抗議が寄せられる問題が発生。そのため厚労省は2010年10月収集事業を中断した。
この激増はNPOが現地で遺骨を買い取る事業をしていたためで、現地の人間が墓荒らしをして持ち込み、遺骨を金で買い取るこのNPOの方法に批判は集中したが、NPOは問題を起こしたのにも拘らず存続している。
NPO問題に詳しい専門家によると『これはNPOの名を借りた遺骨ビジネスであり、NPO自身は勿論、助成金を支出した当時の厚労省の担当者にも責任は大きい』と指摘している。
この問題に対して時のアキノ大統領は2010年11月に『フィリピン人の遺骨持ち出しが確認されたら日本政府に返還を求め、この犯罪行為に関与した人物は官民を問わず訴追する』と強硬発言。
そのため、泡を食った日本の厚労省は問題となっている遺骨の鑑定を行い、疑わしい遺骨があったにも関わらず2011年に報告書をまとめた。
それには『フィリピン人の遺骨が混入している事実はない』と厚労省は事実と異なる検証結果を記載し、財務省などと同様の事実隠蔽を計っていた。
また翌2012年の別の鑑定人2人による鑑定では『日本人の遺骨は全くなかった』という衝撃的な鑑定結果が出たのにも拘らず、その事実をひた隠しにしていた。
これは2016年4月に2024年まで実施する『戦没者遺骨収集推進法』を成立、施行するための厚労省による取り繕いであり、フィリピンの遺骨収集事業の不手際を隠蔽するものとして内外を問わず批判が集まっている。
しかしながら、遺骨収集事業というのは遺族感情と政治事情が絡むものであり、フィリピンで起きた問題を棚上げして2018年5月には厚労省とフィリピン政府の間で遺骨収集事業の覚書が締結され、事業再開となった。
しかし、ここにきて日本の厚労省の隠蔽、改竄体質が明るみになって、遺骨収集事業が上手く行くのかどうか疑問視されているが、有耶無耶の状態で始まるようだ。
【写真はセブ島北部にある旧日本軍終焉の地】
|