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フィリピン最高裁判所の裁判官(判事)定員は15人で、定年は70歳と定められている。
今年5月に最高裁長官が判事の投票で解任されるという異常な事態に陥っていた最高裁で、後任の長官が決まった。
新長官は『テレシタ・デ・カストロ』判事【写真】で、前長官に続いて女性の長官が任命された。
新長官は今年の10月8日に70歳の誕生日を迎えるために、任期は2ヶ月に満たず、ドゥテルテ政権に批判的な前長官の解任に協力したための、ドゥテルテ政権による論功賞ではないかと取り沙汰されている。
前長官解任劇では解職賛成8票、反対6票と票差は際どかったが、新長官は賛成側に回った。
フィリピンの最高裁判事は時の大統領が任命する方法を取っていて、自分の政策に都合の良い判事を選ぶのはアメリカと同じで、現在の最高裁判事の構成は定年間際判事が多く、2022年までのドゥテルテ任期中に全て退官する。
そのため、ドゥテルテに都合の良い判事ばかりで占められるようになり、その偏向性が指摘され、実際、欠員であった判事は既にドゥテルテによって任命されている。
新長官の初仕事は国際刑事裁判所(ICC、本部はオランダのハーグ)から脱退した、ドゥテルテの措置は議会の承認を受けていないために憲法違反であるとする訴えで、この提訴は反ドゥテル派の上院議員6人が名を連ねている。
訴状によると『条約や協定からの脱退は議会の3分の2以上の合意が必要と、憲法に規定されているため、大統領の独断、恣意的な決定は憲法違反』となっている。
ICCからの脱退はICCがドゥテルテの『薬物容疑者抹殺』政策が、人道に対する犯罪として告発され、ICCが2018年2月に予備捜査を始めたところ、自身の汚点が明るみになるのを恐れて、同年3月にドゥテルテはICCから脱退を決めた。
ただし、ICCの規定では脱退は『脱退通知を受けてから1年後に有効』となっていて、規定上はフィリピンは加盟していることになる。
これに対してドゥテルテは『加盟批准の際に新聞などに公知していないため無効』と強弁し、『大統領は自国の主権が侵害されていると判断した場合は決定できる専権事項で問題ない』としている。
特に後の理屈付けは、中国による南シナ海問題にへりくだるドゥテルテの対応とは真逆で、大統領権限を都合よく使い分けていると批判されている。
新長官は決まったが、ICC脱退問題ではドゥテルテに不都合な判断は出さないであろうと見られ、司法の自壊は進行している。
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