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1986年2月の『エドサ政変』によって、追放された独裁者マルコス一族は今も隠然たる力を持ち、妻のイメルダは地盤であるルソン島北イロコス州選出の下院議員、次女のアイミ―は同州知事、長男は前上院議員で2016年の副大統領選に出馬し次点で落選。
マルコス独裁時代に検事に任官した現大統領のドゥテルテは、歴代政権が拒否したマルコスの英雄墓地埋葬を許可し、マルコス家擁護の立場を取っている。
マルコス家の復権は1986年から既に30年以上が経過し、マルコス独裁政権時代を知らない、学ばない世代が多数派となり、またSNSを通じた安直な情報を盲信する層が惑わされているためと見られている。
しかしながら世間は忘れていても、マルコス問題というのはまだ継続されていて、11月9日、公職者の汚職を裁く『Sandiganbayan(公務員特別裁判所)』は、イメルダ・マルコスの汚職7件に対して、いずれも有罪の判決を下した。
罪状はスイスの銀行などに隠した財産は国庫から略奪したなどで、7件に対して禁錮6年1月から11年になる計70年以上の厳しい判決であった。
また、同裁判所はイメルダの逮捕状発行も命令し、公職に就くことも禁じた。
これに対してイメルダ側は逮捕を免れるために控訴手続きを取り、最終的には豊富な資金力を使って最高裁まで抵抗すると見られている。
マルコス一族の国から略奪した金額は政府調べでも50~100億ドルにも上っていて、この他民間からの口利きリベートはそれ以上とも見られ、フィリピンを逃げ出しても復権できたのはこの汚い金のためと酷評されている。
政府も手をこまねいたわけではなく、過去30年間でスイスの銀行に隠されていた6億ドルなど、計36億ドルを回収したが、これはほんの一部であり、海外に分散された隠し財産の摘発と回収は困難と見られている。
公特栽とイメルダの係争では、1993年に軽量鉄道公社用地を巡って、汚職罪で有罪の判決が出て、1998年には最高裁でも有罪、禁錮9年~12年の実刑判決が出た。
しかし、イメルダは強力な弁護団を駆使し、同年に再審請求して逆転無罪の判決を受けた、これに対して最高裁判事がマルコスの金で買収されたとの話が流れたが、真偽のほどはともかくフィリピンならあり得ると話題になった。
有罪判決を受けたイメルダは現役議員として最年長の89歳だが、2019年の上院選に出馬する娘に替わって北イロコス州知事選に出馬表明していて、当選しても寿命が尽きるのではないかと揶揄されているが、本人は意気軒昂で『老醜』という批判もものともしていない。
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