ミンダナオ島南ラナオ州の州都マラウィ市で2017年5月に発生した、イスラム系武装組織とフィリピン国軍との内戦は同年10月まで続いた。

その内戦をきっかけに、ミンダナオ島全域に戒厳令が発令され同年12月末までの期間限定であったが、ドゥテルテ政権は『安定していない』を理由に2018年一杯まで戒厳令の延長をした。
その期限が切れる12月に入り、戒厳令の1年間の再延長を予定の様に決めた。
その理由は前回と全く同じであるが、戒厳令実行部隊の軍や警察の分析と要求によるとされているが、その内容は藪の中で、法や規則に縛られない活動を好むドゥテルテ政権の体質がますます露わになった。
戒厳令下では軍や警察が逮捕令状なしに拘束することが可能で、人権侵害の事例が各地で多く発生している。
この人権侵害はドゥテルテ政権に批判的な政党グループの元下院議員などを含む18人が、ミンダナオ島内で少数民族支援活動中に突然逮捕されるなど、現場での強権ぶりが目立っている。
戒厳令再延長の理由はどうにもなり、ドゥテルテの子飼い状態となっている上院、下院の議員もドゥテルテには逆らえなく、戒厳令の再々延長はドゥテルテ、軍、警察の治安関係者の思うままになっている。
現在の戒厳令布告地域はミンダナオ島全域となっているが、ドゥテルテ政権はフィリピン全土に戒厳令を布くのではないかと前々から指摘されている。
しかし、全土に戒厳令を布くのは国民の間にもマルコス独裁時代の戒厳令を思い出させ、抵抗は強く今は政権も思いとどまっている状態である。
しかしながら、権力者の企むことは古今東西同じで、各地に緊張が高まっているとして、11月下旬からルソン島ビコール地域、ヴィサヤ地域のサマール島、ネグロス島に軍や警察の部隊が増派されていて、不要な緊張感を煽っている。
これは実質的な戒厳令ではないかと批判は強いが、ミンダナオ島の君主然としたドゥテルテには馬耳東風で、ドゥテルテ自身は2022年の任期終了までに、ミンダナオ島への巨大プロジェクトで同地域を潤す政策に中国の資本注入に邁進中で、利権の介在も噂されている。
こういった地元優先に対して各方面から不満の声は上がっているが、これはフィリピンの歴代大統領が出身地を優遇する過去の例を見れば当たり前と冷めた見方の人も多い。
【写真は2016年の大統領就任式にてのドゥテルテ】
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