昨年末で切れるミンダナオ島全域に布告されている『戒厳令』は、ドゥテルテ大統領の要求によって1年間の延長が求められていた。

その要求を受けて議会は1年間の延長を認めたが、戒厳令延長反対の4つのグループが最高裁判所(SC)【写真】に延長差し止め請求を申し立てていた。
2月6日、SCはいずれのグループの申し立てを棄却し、憲法にも違反しない判断を示した。
しかしながら、最高裁判事の間にも戒厳令延長の判断は分かれ、評決は賛成10対反対5となった。
この中で注目されるのは最高裁判所長官が反対に回ったことで、同長官はドゥテルテ大統領陣営から追い落としが計られていて、今回の反対評決によって追い落とし工作が強まると見られている。
最高裁の判事は時の大統領が欠員を任命する仕組みになっていて、同長官は前政権のアキノが任命し、ドゥテルテになってから最高裁判事は4人任命されているが、3人がドゥテルテ政策の賛成に回り司法に対する政治的思惑が反映されている。
戒厳令の1年間延長に対して、政府側はミンダナオ地域の不安定さは続いていると理由を挙げているが、昨年12月に行われた民間調査では62%の高率で『戒厳令延長は必要ない』の結果が出ている。
この調査は民間調査機関SWSが12月8日から16日にかけて1200人の成人を対象に行っていて、政権の思惑と民意の乖離が顕著な結果となった。
なお、同調査で延長賛成は26%、態度不明が12%となっている。
地域別では延長反対はマニラ首都圏が一番高く67%、続いて同首都圏を除いたルソン島地域の63%となった。
一方、戒厳下に置かれているミンダナオ島は62%と、戒厳令の効力を疑問視する声が高く、セブを中心とするヴィサヤ地域は55%と延長賛成に傾いている傾向が出ている。
当事者のミンダナオ地域で延長反対がかなりの高率で出たのは、同島マラウィ市でのイスラム武装勢力との戦闘が終わり、戒厳令がなくても治安は維持できるという民心があり、政府や軍当局の持つ状況判断に隔たりが見られる。
こういった中での、最高裁の延長合憲判断は汚点になるとの指摘があり、ドゥテルテの強権政策に司法がどこまで歯止めがかけられるか注目が集まっている。
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