フィリピンには『トライシクル』という、100cc程度のオートバイに屋根付きの側車、あるいは一体化した3輪の交通機関がある。
フィリピン全土に350万台走っていて、庶民の貴重な足となっているが、この一部10万台を電動化する事業をADB(アジア開発銀行=歴代総裁は日本人)が進めていて、この程普及事業に対して3億ドルの融資を承認した。
ADBによると、10万台を電動化することによって、ガソリン消費が年間1億ドル節約、深刻化するフィリピンの大気汚染中、二酸化炭素(CO2)排出量を年間20万トン削減出来、雇用の面でも生産関連で1万人を見込むと、いいことずくめの予測をしている。
ADBはフィリピンの大気汚染の3分の2以上はこのトライクルのためと見ているが、識者からはその算定は、事業を進めるための数字いじりで他の車種を見れば実態とはかい離しているとの指摘もある。
既に事業は動き出していて、10月2日には5000台の入札が行われ、日系企業を含む内外の11社が応札したが、今現在入札企業は決まっていない。応札した企業側によると入札が決定しても実際に生産に入り、姿を現すのは入札後半年くらい先の模様。
電動トライシクルは6人定員仕様となっているが、実際の運用は地方に行けば写真のように、乗せるだけ乗せるのが実態で、少ない人数では収入が得られないため、どこまで普及できるか問題は多い。
また、フィリピンはハイブリッド車がようやく入った段階の国で、電気自動車ははるか先の話で、電動トライシクル導入に当たっては、充電設備、修理体制、修理要員といった物がセットされていないと絵に描いた餅に成り下がりかねない。
このため、当初の5000台は監督のし易い首都圏と、環境に優しい意図でボラカイなどの島を含めた観光地に配備される計画。
この巨額な事業、トライシクルなど乗ったことがない運転手付きの車で通うADBの人間が企画、進めているのではないかと、その理想主義を危ぶむ声もあり、もっと必要で優先されるインフラ事業に融資を回すべきとの声も大きい。
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