5月13日、マニラ首都圏バレンズエラ市(人口60万人以上)で発生したサンダル工場火災は工場1階で工事中の溶接工事の火花がサンダル加工に使用する化学薬品に引火させた管理の杜撰さが引き起こした。
このため2階にいた工員が火勢に追われながら窓に設置していた鉄格子のため逃げられず、72人が焼死する大惨事となった。
この火災事件の遺族に対して会社側の雇った弁護士が凄腕を発揮し、犠牲者の遺族中、57遺族が会社側提示の示談額を受け入れた。
示談金の内訳は会社側弁護士によると死亡給付に10万ペソ、埋葬費に1万ペソ、6200ペソがひつぎ代、5000ペソが遺族の交通費となっていて、総額15万1200ペソ(約42万円)。
フィリピンは人命の値段が安い国との評価があって、例えば交通事故で人間をひき殺しても10万ペソ程度で話が付いてしまう話がゴロゴロしていて、今回の示談額もフィリピンでは高額な方だとの意見もある。
しかしながら、地方から出てきて劣悪な労働条件の中、食うや食わずで働いている最中に命を落とした代償としては安いのは確かである。
不動産と株式バブルに踊り、アセアン域内で最高の成長率を誇るフィリピンは成長路線を歩んでいるように見えても貧富の格差は縮まらず、前近代的な『女工哀史』が今も存在するのが、この火災によってあぶりだされた。
この火災を起こした会社は最低賃金を支払っていないなどの数々の労働基準法違反が確認され、監督官庁は労働基準法違反で追及をしているが、火災発生後40日余で被害者への示談が進んだことで、追及の手が緩むのではないかと警戒されている。
この懸念に対して政府高官は『示談によって同社の刑事責任は消滅しても、民事責任は変わらずにある』と指摘し、追及の手は緩めない姿勢を示し、金で事件解決を計っている会社側に対して釘を刺した。
こういった動きの中で、示談を拒否した遺族や火災の生存者約50人は業務上過失致死傷の疑いで、バルドス労働雇用長官とロハス内務自治長官など政府関係者8人を行政監察院に告訴した。
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