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事件は10月21日午後1時半頃、9月に着任したばかりの中国セブ領事館総領事自身の誕生パーティーが開かれていたレストラン個室で発生。
個室には当時9人と言う少人数しか居なかったが、そこに出席していた同領事館に勤務していた男(60歳)と1等書記官としてヴィザ業務を行っていた妻(57歳)が出席者と口論の末に、持っていた45口径のピストルを発射。
発砲によって同領事館会計担当館員(女性)と男性領事の2人が病院に緊急搬送されるも死亡。
また、当日の主役だった総領事は首に被弾したものの生命には別条なかった。
外交官同士の殺人としてセブはおろかフィリピンでも前代未聞の事件だが、犯人夫婦は犯行後、レストランから逃走し、3キロほど離れた同領事館で身柄を確保されたが、同夫婦はウィーン条約に定められた『外交官の不逮捕特権』を主張し、警察の取り調べにも黙秘して事件は膠着していた。
しかし、中国外務省が『身内の恥』を隠蔽するために乗り出し、犯行後に国家警察セブ署に拘束されていた夫婦は同月23日、マクタン・セブ国際空港より中国・厦門(アモイ)行きの直行便で出国した。この際、中国側から多数の警官が乗って来たと言われるが、この処置でフィリピン側の捜査は及ばぬ事となり事件解明は闇に葬られた。
事件の原因は射殺された会計担当者と犯行夫婦の『金銭トラブル』とささやかれていて、実際射殺された会計責任者の銃撃後の写真には頭部に銃弾を受けてうつ伏せに横たわる写真が地元新聞に掲載され、至近距離から頭部を確実に狙った計画殺人と見られている。
また犯行に使われた45口径はマニラ首都圏バレンスエラ市で過去に押収された銃で、何らかの経緯で夫婦が手に入れたと見られているが解明は不可能になった。
こういったフィリピン側の弱腰に対して、識者は『外交官の不逮捕特権』は重大刑事犯罪や破廉恥罪には適用されず、今回の事件は殺人と言う凶悪犯罪のためにフィリピン捜査当局は逮捕できると指摘している。
フィリピン側が弱気だったのは、中国人同士の犯罪のため無関心を装いたかったためと、フィリピン経済を牛耳る中国系フィリピン人の圧力があったためと言われるが真相は不明である。
また、一般のフィリピン人もこの事件に関して盛り上がらず、かつて米兵が婦女暴行で捕えられ、その身柄と裁判を巡ってアメリカに対して猛然とした抗議活動が行われた事を考えると、今回の事件はあまりにも無関心すぎるのが特徴で、中国政府もそれを狙っているようだ。
また、フィリピンの店や銀行には当たり前の様に必ず銃を携帯したセキュリティーが入口付近で警備をするものの、今回の事件で易々と犯行後の犯人夫婦の逃走を許したことで、全く当てにならない事が立証され、過度に期待、依頼することは危険と証明された。
【写真は事件のあったレストラン近くの通りの様子】
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