
フィリピンでは海外の映画作品上映はハリウッド映画がほとんどの国で、時々日本やタイなどの作品も上映されるがごく稀であり、フランスやイタリアといった優れた映画を生む国からの作品の上映は皆無と言って良い。
そういった映画ファンには歪な状態ながら、国産映画の製作、上映は盛んで、その大部分はタガログ語映画になり、フィリピンの2大テレビ・ネットワークが絡んだ作品が多く上映されている。
また、映画は全盛を過ぎたとはいえ、まだまだフィリピンでは娯楽の一画を占め、ショッピング・モール【写真がそのモール内の映画館】と連動したシネマ・コンプレックスも多く生まれている。
そういった中、数ある国際映画祭の中で伝統と確かさを持つカンヌ映画祭に出品されたフィリピン映画『Ma Rosa』で主役を演じた女優ジャクリン・ホセ(52歳)が最優秀女優賞に選ばれ、フィリピン初の快挙となった。
題名のMaはMatherの略称で、フィリピンでは母親を呼ぶ時、多く使われる言葉で、Rosaはジャクリン・ホセの演じた主人公の名前になる。
この映画はマニラのスラム街で小さな店『サリサリ・ストア』を営む夫婦が、生活のために裏で違法なドラッグを売っている様子を描いた110分の映画で、監督はブリランテ・メンドーサ。
メンドーサは鬼才で知られ、第61回カンヌ映画祭にフィリピンからは24年ぶりの作品『Serbis=サービス』を出品し注目された。
続く第62回に出品した『Kinatay=マニラ・アンダーグラウンド』で監督賞を受賞し、この他ベルリンやドバイの国際映画祭などで受賞歴を持つ。
ジャクリン・ホセは1986年から映画界とTV界で活動していて、フィリピン国内の各種映画賞を受賞しているベテラン女優で、カンヌで受賞した作品には娘の女優アンディ・アイゲンマンも共演している。
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