経済開発機構(OECD)が2019年12月に公表した国際学習到達度調査(PISA)によると、初めてこの調査に参加したフィリピンは項目によっては最下位に近い結果が出て、教育関係者から落胆の声が挙がっている。 この調査は79ヶ国・地域の15歳約60万人を対象に2018年に実施されたものだが、フィリピンは『読解力』が最下位、『科学的応用力』と『数学的応用力』が下から2番目の78位と基礎学力の質が劣っていることが判明。
最下位となった『読解力』だが、フィリピンは340点で、OECD平均の487点とかなりの開きがあった。
同様に平均点489点の『数学的応用力』は353点、平均点489点の『科学的応用力』は357と何れもかなり低い結果となった。
なお、フィリピンとこれらの項目で下位争いをしている国はドミニカだが、『数学的応用力』が325点、『科学的応用力』336点となり、『読解力』では最下位のフィリピンを2点差で上回った。
調査項目中『読解力』についてOECDは他人とコミュニケーションを取る、説明書を読むといった活動に必要な能力であると見ていて、フィリピン人はコミュニケーションを取るのが上手という定説が揺らいでいる。
この『読解力』については日本も順位を落としていて、2015年の前回調査では8位であったのに今回は15位となり、この結果は同調査で過去最低となった。
同じく前回2位であった『科学的応用力』が5位、『数学的応用力』が前回5位から6位と何れも順位を下げた。
一方、地域として参加した中国の北京、上海、江蘇省・浙江省が3分野で全て1位となったが、中国政府の何らかの作為があったと調査結果そのものに疑問が投げかけられている。
このため前回調査で全分野で1位を占めたシンガポールは何れも2位に陥落する羽目になり、3位にはマカオが入り、中華圏は学力に関心が高く好成績の結果を得ている。
OECDは今回の調査結果に関して、フィリピンのように生徒の貧富と成績の相関関係の強い国では、貧困層などの教育弱者に一層の施策、手当てが必要と指摘している。
フィリピンは国際基準の12年制を取り入れるなど教育には熱心で、『教育ビジネス』は伸びる一方だが、それも一部の階層に恩恵を与えているような状況が亢進している。
特に公立学校の教室不足、教師不足は長年解消されず、午前午後で教える2分授業が普通の自治体も多く、学力の劇的な改善は難しい状況となっている。
【写真はセブにて教育も重要だが人口爆発もフィリピンは取り組む問題】
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