フィリピンの都市圏道路は地獄的な渋滞が慢性的に発生し、特にマニラ首都圏はバンコクに代わってアジア最悪の渋滞都市となっているが、それでも軽量鉄道や地下鉄を計画、実行に移している。

マニラ首都圏に劣らない渋滞都市にセブ市を中心にした300万人以上が生活するセブ都市圏があり、ここ数十年の間に車は激増して道路を埋め尽くしているのに、道路改良や新規道路などほとんど増えていなくて渋滞に輪をかけている。
そのセブも公共都市交通の導入プランはあって、それで決まったのが既存の道路上に専用レーンを設けてバスを走らせる『Bus Rapid Transit (BRT)』。
1990年代に当時のセブ市長がプロジェクトをぶち上げ、BRTを推進するフランスの企業がプロジェクトを売り込み、2008年になってフランス政府がバックになって世界銀行の融資が決まった。
融資額は1億9800万ドルで、BRT以外にも他企業から軽量鉄道の計画も出されていたが、BRTを推進したフランスの企業と当時の市長が近しい関係から、BRT決定に関しては不明朗だとの批判は絶えなかった。
また、運用上の問題として渋滞を引き起こしている既存の道路に専用レーンを設けて走らせるBRTは渋滞に輪をかける結果になり、最低でもマニラのような専用軌道を持つ軽量鉄道を採用するべきとの意見、指摘は多かったがBRTに比べて軽量鉄道建設は金がかかると一蹴された。
計画では路線距離16キロ、その間に33の駅を設けて1日3万3000人の利用者を見込み、2019年度中に開通を見込んでいた。
工事はいくつかの区間に分けて行われるが、駅を確保するために既存道路を広げたりすることが全く進まず、2022年2月現在でも開通する見込みが立っていない。
一方でいかにも薔薇色の机上プランだけは進み、将来は路線を各方面へ延長し、マクタン-セブ国際空港までBRT路線を延長し、しかも当初の3万人台の利用者数から6万人になるなど絵に描いた餅ばかりをアピール。
こういった体たらくで遅れに遅れているプロジェクトを認可していた政府機関も仕方なく2年間の対外融資延長を認めたが、といって先行きが明るくなった訳ではない。
そういった中、新たにセブ市が所有する南部の埋め立て地に新BSTターミナルを作る計画も暗礁に乗り上げたが、これなども思い付きで始めた結果だとと酷評されている。
こうして、BRTは完成してもほとんど渋滞の渦に飲み込まれて機能しないだろうと今から囁かれていて、セブ市は2億ドルを溝に捨てるようなプロジェクトを進めていると批判されている。
現在、セブ市は民間バス会社のバス20台を借りてBRT路線にバスを走らせているが、本末転倒との声も高く、最初から軽量鉄道にしておけば良くBRTは安物買いの銭失いプロジェクトとなりそうだ。
【写真はBRTの文字通り絵に描いた餅のセブ市の完成予想図】
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