鉄道など公共の大量輸送機関が全くないセブ市では、マニラ首都圏と並ぶ東南アジアでも最悪クラスの慢性的な交通渋滞都市になるが、足の確保のために4輪車やオートバイ(バイク)は増える一方でそれがまた渋滞を生む悪循環に陥っている。

特に近年はバイクを持つ人が増え、これは4輪車には手が届かないが、バイクなら手が届く層が増加したこと、ローン制度の充実が挙げられている。
また、従来ジプニーなどを利用していた人々が同じ交通費を払うなら財産として残り、いつでも自由に使えるバイクの方が良いと意識が変わったこともある。
そのため、ここ数年で街にはバイクの姿が溢れるようになり、フィリピンに進出している日本のバイクメーカーは相次いで増産体制を拡充している。
しかしながら、手軽に乗れるために無謀な運転者も多く、バイクによる死傷事故が頻発し、4輪車による事故の死傷者より多いのではといわれる始末だが、全国的な統計は出ていない。
また、無免許運転や不整備車両の運転といった例も多く、警察は重点的にバイクに対して検問を行って違反者摘発を行っている。
その検問で交通違反あるいは違反車両として押収されたバイクなどがセブ市では増え過ぎて問題になっている。
セブ市によると、2010年以降に違反者が罰金を収めなかったり、必要書類を提出しないためにバイクを主に2100台以上が押収されたまま、市の保管場所に野晒しになっている【写真】。
日本でも放置自転車として捨てる例は多いが、フィリピンのように物余りには程遠い国でバイクを放置、引き取らないのは尋常ではない事態であるが、それにはチャンとした理由があった。
押収されたバイクには保管料として1日当たり100ペソ、4輪車なら300ペソ、トラック500ペソが罰金に上乗せされる。
そのため、一ヶ月も引き取らないとひと月3000ペソにもなり、この額だと新しいバイクを買って月々払っても変わりなく、旧型のバイクを押収された者は新車を買った方が良いと意図的に引き取らないと見られている。
ただし、市当局によると2020年度と2021年1月から5月にかけて違反に伴って押収したバイク、4輪車、トラックなどの総数は4664台で、内3963人が罰金と保管料を払って返還されていて、この多くは新車に近い物という。
バイクなど車両が増えれば違反も増え、市当局によると今年4月だけでも15000件以上の交通違反チケットを出していて、運転者の無法ぶりは相変わらず、市当局も交通行政無策の状態が続いている。

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