5月に行われた大統領選に副大統領から立候補し、結果は4位という本人には屈辱的な順位で落選したビナイ前副大統領が、公務員の汚職などを取り締まる行政監察院から、7月14日、汚職罪などで公務員特別裁判所に起訴された。

ビナイは副大統領になる前は首都圏マカティ市で1989年から通算18年間市長職を務め、一族で市政を思うままにしていた。
今回の起訴はビナイが市長在任中に息子の市会議員(ビナイが副大統領選に出馬後は跡目を継いでマカティ市長に当選)などと、2007年に11階建ての高層駐車場を含む第2庁舎を建設する際、正規の入札やその公告などを行わず、密室の中で事業を進めた事が該当し、ビナイやその息子、建設業者など14名が訴追された。
この新市庁舎計画は市議会では予算案を可決されていたが、その後数回に渡って補正予算の追加が行われ、最終的には約22億8千万ペソ(約57億円)に膨らみ、この建設費をビナイ一味が『水増し』した疑いが今回の起訴に繋がっている。
この汚職事件は2014年7月に、当時のマカティ副市長から告発されたのが発端で、行政監察院は同年9月に本事件の裏付け捜査を行い、2015年10月に行政監察院は起訴をする方針を固めた。
実際の起訴が2016年7月になったのは、行政監察院の説明によると、捜査期間中のビナイは副大統領職にあり副大統領には任期中の訴追免除特権があるため、副大統領の任期切れを待っていたとされる。
ビナイにとっては大統領に当選して、同様の訴追免除特権を継続させようと目論んでいたようだが、一時は大統領選に独走という時期もあったにもかかわらず、数々の市長時代の汚職が告発される至り、大統領選では失速した。
今回の汚職罪の起訴は僅かな保釈金を払えば保釈が認められているために身柄は拘束されず、ビナイ側は法廷闘争に入る模様。
ビナイの汚職疑惑は今回の市庁舎建設水増し以外に、市の事業認可絡みの不正手数料や口利きによる賄賂、あるいは隠し財産として指摘されている所有の農園など数々浮上していて、マカティ市政を牛耳っているビナイ一族の悪行にメスが入る。
一方、フィリピン有数のビジネス街を擁するマカティ市に進出し、ビナイ一族に口を聞いてもらえば、認可と事業は円滑という企業との癒着なども明らかにされるのではないかと見られている。【写真はマカティ市庁舎】
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