サウジアラビアで9月上旬から始まる『大巡礼=ハッジ』はイスラム教徒が生涯に一度は行うべき義務となっていて、毎年300万人もの教徒がこの時期に聖地メッカを訪れる。【写真はその様子】

混雑が引き起こす事故や事件も多く、2015年には2000人以上の巡礼者が将棋倒しになって死亡する事件も発生している。
そのため、サウジアラビア政府は各国に巡礼者の数を割り当てているが、割り当て人数が満たない国もあってフィリピンはその国の一つになっていた。
その隙間を突いた事件が8月19日、マニラ国際空港で発生した。
第2ターミナルからフィリピン航空サウジアラビア・メディナ行きに搭乗しようとした、インドネシア人177人とマレイシア人10人がフィリピンのパスポートで出国する際、入管の出国審査で不審に見られ、フィリピン各地の言語で問いかけても英語しか解せず、偽造パスポートを使って不正に出国しようとしたことが発覚、全員が逮捕された。
また、この時添乗員として5人のフィリピン人が同道し、こちらも逮捕された。
インドネシアは2億人以上の世界一のイスラム教徒を抱える国ながら、今年の割り当て分は16万8千人、しかも減少する傾向にあり、巡礼の割り当てを正式に待っていると10年も先になるため、金を支払って他国の割り当てで不正な巡礼に出るケースは以前より指摘されていた。
今回摘発された偽造パスポートはフリピン外務省発行の正式なパスポートであり、フィリピン、インドネシア、マレイシアを結ぶ役人と業者を巻き込んだ大掛かりな組織が存在することが今回の摘発で分かった。
入管当局は今回の逮捕者を首都圏タギグ市の施設に収容し、インドネシア当局から逮捕者の身元解明などをしているが、逮捕者時6000ドルから1万ドルを払って参加したと供述している。
今回の事件はたまたま摘発されたが、これは氷山の一角で巡礼のためにフィリピンからサウジアラビアへ行く渡航者に対して、フィリピン当局は警戒を強めている。
なお、今回の事件のフィリピン航空メディナ行きだが、メディナにはイスラム教の預言者ムハマンド(マホメット)の墓とモスクがあり、巡礼を始まる前に教徒は訪れる重要な聖地になっている。
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