 殺人及び殺人未遂の罪状で審理が進んでいた、福岡に本籍のある60歳の邦人男性被告に対して首都圏マリキナ地裁は20年から40年の有期刑判決を下した。
事件は2012年7月22日午後8時半過ぎに、同被告が45口径拳銃でマリキナ市と隣接するルソン島中部リサール州サン・マティオ町の2ヶ所で発砲し、フィリピン人男性1人の殺害、6歳の女児を含む5人のフィリピン人に怪我を負わせた。
事件の原因はフィリピン滞在10年以上の同被告が、別れたフィリピン人妻(事件当時30歳)のその親戚、知人に貸した金を巡ってのトラブルで、殺害された男性は元妻の弟であった。
この事件は、フィリピン人から殺される邦人事件がほとんどの中、その逆となった事件で注目を集めたが、裁判が3ヶ所で行われ、しかも被告が現地語や英語を理解せず、審理開始そのものに時間がかかった。
それでも、2015年1月には、3ヶ所の内の裁判管轄地の1つ、サン・マティオ地裁で、事件発生から2年半経過していながら、検察側の目撃者の証人などが出廷しないなどの理由で『公訴棄却』となっている。
しかし、これはマリキナ地裁で審理が行われているため2重審理を避けるための方便と見られている。
マリキナ地裁では被告の妻や目撃者などが証言をしていて、事件発生4年目にして判決が出、これは著しく時間のかかるフィリピンの裁判事情からはかなり早い。
この事件の背景は被告がフィリピンの事情をほとんど知らない状態でフィリピンに移住し、これも騙される日本人の多いタクシー業や金貸し業を元妻らの甘言に騙されてやっていたが、その実態は手持ちの金を搾り取られた典型的な困窮邦人に至るケースであった。
被告は飲酒後に騙された相手に対して貸した金の返済を求めて凶行に及んでいるが、元妻は分かれた理由を元夫の暴力を挙げていて、双方どちらもどちらという関係である。
初老から老齢の邦人男性と若いフィリピン人女性、大き過ぎる歳の差とフィリピンに移住、小金持ち、妻及び縁者からの寄生。といった共通するキー・ワードを持つ邦人は激増していて同種の事件は今後も起きると見られている。
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